2004 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞と細胞増殖因子とを利用した生体組織の再生誘導
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03J04811
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 寛樹 京都大学, 再生医科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 間葉系幹細胞 / コラーゲン / 徐放 / ゼラチン粒子 / 炎症 / フマル酸誘導体ポリマー / 成長因子 / 遺伝子 |
Research Abstract |
組織再生を促す目的で、既に確立したコラーゲンスポンジ製チューブを用いた神経再生の系に、材料埋入手術中、骨髄由来間葉系幹細胞の播種を行った。しかし、神経伝導試験や組織学的評価において、有意な改善は見られなかった。また、コラーゲンチューブに神経成長因子(NGF)を含浸した試みでも、神経組織再生の有意な促進は認められなかった。この原因として、昨今他グループより報告されている神経損傷に伴う炎症の影響が考えられた。そこで本研究員はこの炎症反応の制御を目的とし、生分解性材料であるフマル酸誘導体ポリマーを用いた低分子消炎剤の徐放系を考案した。この新規な材料についてノウハウを取得するため、本研究員は平成16年9月まで、米国ライス大学のA.G.Mikos研究室にて出向研究を行った。ここで、フマル酸誘導体ポリマーの特徴を活かし、架橋による分解性の調節、疎水性薬剤との共溶による製剤化、生体内架橋・溶媒拡散による留置・サブナノサイズの粒子化など、臨床応用における簡便性を向上させる注入可能製剤化に成功した。また、本研究員の出向先研究グループが昨年示した親水性化フマル酸誘導体ポリマーと成長因子の組み合わせによる軟骨組織の再生を、より広範囲の組織・成長因子・分化因子・サイトカイン・siRNAなどに適用して更に発展させるため、同タンパク質をコードする遺伝子の徐放を試みている。具体的には、まず成長因子徐放に用いたゼラチン粒子の粒径を更に微細化することにより細胞への取り込み性向上、次にこの遺伝子を収着させた粒子を親水性フマル酸誘導体ポリマーと組み合わせることにより、理想的な遺伝子の放出の実現と幹細胞のための足場性材料との複合化を目指している。既に骨形成因子-2(BMP2)遺伝子・ゼラチン粒子・親水性フマル酸誘導体ポリマーの複合体を生体骨欠損に埋入し、プレリミナリーなin vivo骨再生の実験を行った。この結果を改善するため、現在、ポリマーと上記粒子の調製法の改善を進めている。
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