2005 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞と細胞増殖因子とを利用した生体組織の再生誘導
Project/Area Number |
03J04811
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 寛樹 京都大学, 再生医科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 骨再生 / コラーゲン / 足場 / TGF-β1 / 徐放 / 熱架橋 / 間葉系幹細胞 / 振盪培養 |
Research Abstract |
本研究員は、熱脱水架橋コラーゲンスポンジに収着させたトランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)が、スポンジの生体内分解に伴い徐放され、骨再生を促進することを報告してきた。この骨再生に影響する要因を検討するため、スポンジの熱架橋時間を変化させることによる生体吸収性の制御・スポンジの厚さを変化させることによる再生組織体積の制御・スポンジ調製時の凍結温度変化によりスポンジの孔のサイズを変化させることによる足場性の制御・生分解性高分子繊維との複合化や紫外線架橋の併用によるスポンジの物性制御を試みた。特に、生体吸収性制御の実験結果から、この材料による骨再生は、スポンジの生体吸収性、およびTGF-β1の徐放性のみに依存しないことが示された。他に寄与する要因として、スポンジへの熱架橋処理による細胞浸潤性への影響が考えられた。そこで、組織再生に関わると考えられる間葉系幹細胞のスポンジへの接着性を振盪培養系で、そして長期の材料への細胞浸潤性をマウス背部皮下移植系で評価した。その結果、熱架橋時間の増加に伴い、培養でも生体中でも細胞のスポンジへの浸潤性が低下していることが示された。こうしたデータの数値と骨再生の数学的関係付けを試みた結果、残存したスポンジ中の細胞数・TGF-β1の残存量・細胞の浸潤しうる深度の単純な積が最終的な再生骨の骨密度に近いプロフィールを示すことを見出した。この数式から求められる値の次元は、密度と一致する上、数式の各項は、組織工学の三要素とされている細胞・細胞増殖因子・足場に対応する。従来、これらの三要素は別々に評価が行われており、本研究は各要素間および組織再生の結果との関係を評価した最初の研究の一つであり、今後、組織再生に働く三次元の場(ニッチ)を理解・設計するために重要な知見を得ることができたと考えられる。
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Research Products
(2 results)