2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J04815
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
虻川 操 (横山 操) 京都大学, 木質科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 木材 / 材料寿命 / 老化(経年変化) / 促進劣化 / 熱処理 |
Research Abstract |
木材における劣化は、菌や昆虫による生物劣化、太陽光や風雨による材料表面近傍で生じる風化、そして、材料内部で長い歳月にわたって生じる老化(経年変化)に大別できる。ここでは、それらの中でも、老化(経年変化)に注目し、老化を常温での緩やかな酸化反応であると仮定することにより、熱による促進劣化処理の効果について検討した。特に、樹種による耐久性の違いを明確にすることを目的として、針葉樹スギ(Cryptomeria japonica D. Don)、ヒノキ(Chamaecyparis obtuse Endl.)および広葉樹ケヤキ(Zelkova serrata Makino) Makino)の3樹種について力学実験および熱分析を行った。得られた結果は以下のとおりである。 1 180℃で熱処理をした木材の力学測定を行った。スギ・ヒノキの繊維方向の曲げヤング率および曲げ強度は熱処理によってわずかに上昇し、ケヤキではやや低下した。熱処理が曲げヤング率および強度に及ぼす影響に樹種依存性が認められた。 2 熱分析(DSCおよびTG)を行った。180℃一定で保持したときの発熱量および重量減少量はケヤキ、スギ、ヒノキの順に小さくなり、材料使用時の耐久性の程度を裏付ける結果が得られた。また、スギ・ヒノキ・ケヤキともには吸着水の離脱に基づく100℃近傍の吸熱ピーク、ヘミセルロース、セルロース、リグニンのそれぞれの分解に対応すると考えられる300℃近傍、350℃近傍および400℃近傍に発熱ピークが認められた。これらは、熱処理によって、スギ.ヒノキではヘミセルロースの分解に基づくピーク値が小さくなり、ケヤキでは、リグニンの分解に基づくピーク出現温度がやや低下する傾向が認められた。このことから、劣化のメカニズムが樹種により異なること、針葉樹ではヘミセルロースが、広葉樹ではリグニンが劣化の傾向を顕著に示すことが示唆された。
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