2003 Fiscal Year Annual Research Report
人為的な影響を大きく受ける荒廃山地での土砂動態の解明とそのモデル化
Project/Area Number |
03J04816
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下八重 秋津 京都大学, 防災研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 土砂移動過程 / トレーサー実験 / 地表高の変動 / 流域の土砂管理 / 侵食高測定装置 |
Research Abstract |
2003年6,月10日から2003年12月28日までアメリカ、アリゾナ州トゥーソンにあるUSDA-ARS、SWRCにおいて土砂移動の評価手法に関する基礎研究を行った。SWRCの調査流域は、年間の降水量が300mm程度の乾燥地である。この流域では、モンスーン(6-8月)の時期に大きな降雨があり、この時期には多量の土砂が生産・流出する。SWRCの調査流域では、1950年代から長期的かつ詳細な雨量、流量、気温、日射量などの観測が行われている。しかし、この調査流域での土砂流出に関する情報は流域末端の総流出土砂量のみであり、降雨に伴う土砂の移動過程は明らかでない。降雨時の流域内の土砂の移動過程を明らかにすることは流域の土砂管理において重要であるため、Rare Earth Element (REE)と呼ばれるトレーサーを用いた土砂の移動過程を評価するためのフィールド実験が計画されている。そこで、本年度は、Rare Earth Element (REE)をトレーサーとして用いるための基礎情報を得るため、SWRCの調査地で採取した土を用いて簡易なろ過実験を行った。この実験の目的は、SWRCの調査流域の土にREEが吸着するかどうかを確認することである。実験の結果、REEは調査流域の土の中に取り込まれることが明らかになり、REEは調査流域での土砂移動を評価するためのトレーサーとして有効であることがわかった。 また、地表高の変動(侵食・堆積深の変化)を簡易に計測するため、Erosion Bridgeと呼ばれる測定装置および解析システムの開発を行った。Erosion Bridgeは51本のピンとカメラを固定するためのマウントから成り、軽量で簡単に持ち運ぶことができる。一方、解析システムとは、デジタル画像から51本のピンの先端部の高さを自動で取得するプログラムである。この測定装置およびシステムを用いると、流域内の多くの地点での地表高の変化を容易に計測、解析することができる。また、測定点を固定することによって、地表高の長期的な変化を容易に評価することができる。今後、このシステムの精度を明らかにした上で、現場での適用を試みる予定である。
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[Publications] 木本 秋津: "田上山地の裸地斜面における表面流の発生と土砂移動に関する原位置人工降雨実験"砂防学会誌. 55. 52-55 (2002)
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[Publications] akitsu Kimoto: "Modeling soil erosion in a hilly mountainous catchment of Southern China"Hydrological Processes. (投稿中).