2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J04835
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
座馬 耕一郎 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 利他行動 / チンパンジー / シラミ / 霊長類 / 葉の毛づくろい行動 / 除去行動 / 寄生虫 / マハレ山塊国立公園 |
Research Abstract |
タンザニア、マハレ山塊国立公園で2003年8月から12月まで、ワカモノ期の野生チンパンジーの調査をおこなった。目的は、(1)毛づくろい行動がどの個体に対しどれくらいの持続時間、かき分け速度、除去効率でおこなわれるか、(2)利他行動がどのような個体間でおこなわれるか、(3)毛づくろいで除去されるシラミの卵の密度はどれくらいか、の3点をあきらかにすることである。(3)について、チンパンジーが樹上につくるベッドに残された毛を採集し、その毛に付着していたシラミ卵を数える方法をとった。結果は、44ベッドから1,156本の毛を採集し、2個のシラミ卵を発見した。毛の本数あたりのシラミ卵密度は0.0017であり、筆者が1999年から2000年におこなった調査時の値(0.0024)とほぼ同じであり、ニホンザルの値(0.00014)より高かった。このことからチンパンジーにとってシラミは重要な寄生虫であることが示唆され、それを取り除く毛づくろい行動が利他行動として意味のある行動であることが示唆された。また、「葉の毛づくろい行動」に用いられた葉にシラミ卵が残されていたのを発見した。「葉の毛づくろい行動」は、チンパンジーが毛づくろい中に取り除いた寄生虫を葉の上でつぶす行動であることが知られているが、同定された寄生虫はこれまでシラミ1頭だった。今回の調査でシラミ卵が発見されたことは、チンパンジーが実際にシラミだけでなく卵も除去している確実な証拠となった。また卵も含めてシラミが、チンパンジーが除去する寄生虫の中心である可能性が示唆された。チンパンジーがじっさいにおこなった毛づくろい行動については分析中であり、行動と寄生虫の資料を総合して、毛づくろい行動の利他行動としての価値について討論していく予定である。またこの結果を、その他の利他行動の分析結果と比較し、総合討論していく予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Hanya G, Yoshihiro S, Zamma K, Kubo R, Takahata Y: "New method to census primate groups : estimating group density of Japanese macaques by point census"American Journal of Primatology. 60. 43-57 (2003)