2004 Fiscal Year Annual Research Report
ポンダウン層の哺乳類化石の記載と東アジアの新生代前半における哺乳類の進化
Project/Area Number |
03J04836
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鍔本 武久 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 哺乳類 / 化石 / 東アジア / 霊長類 / 生物多様性 / 新生代 / 地球環境 / 気候変動 |
Research Abstract |
今年度は,化石標本の剖出作業・模型作成・写真撮影,データ入力・解析,および論文の執筆を中心に研究を進めていった.また,東アジア北部のモンゴルにおいて化石標本の採集もおこなった。東アジアの哺乳類相の解析に関しては,論文を発表した.新生代の哺乳類との比較のため,中生代の哺乳類についての研究もおこなった.国内の学会(6月「日本古生物学会年会」,7月「日本霊長類学会」,1月「日本古生物学会例会」),国際古脊椎動物学会(11月)において研究成果を発表した.さらに,専門の学術雑誌に研究論文を発表した. 今年度の主な研究成果は以下の通りである. (1)東アジアにおける始新世後半の哺乳類相の変遷について調べた.中期始新世では東アジア全体で各動物相間の類似度が比較的高く,奇蹄類が繁栄していた.しかし,中期始新世末期に南部で偶蹄類の台頭がおこり,後期始新世の初めまでに南部では偶蹄類が繁栄し,奇蹄類が衰退していった.一方,北部では奇蹄類が繁栄したままであった.これにより,南部の動物相と北部とそれとの間の類似度が低くなった.東アジア南部ではEocene-Oligocene transitionに伴う哺乳類相の変化は,北部のように始新世-漸新世境界ではなく,むしろ中期-後期始新世境界付近で起こったようであることがわかった. (2)福井県から見つかった白亜紀前期(約1億3千万年前)の哺乳類の化石は,新属新種であることがわかり,Symmetrolestes parvusと名付けた.この化石は日本で2番目に古い哺乳類化石である. (3)ミャンマーのポンダウン層から産出する有蹄動物について,新しい標本を記載した上で有蹄動物相についてのまとめをおこなった.当時の古環境は温暖湿潤であり,有蹄哺乳動物相は同時代の中国やモンゴルのものとはやや異なっていることなどがわかった.
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