2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J04895
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 祐 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | エスニシティ / 歴史社会学 / ラテンアメリカ / 先住民 / 共同体 |
Research Abstract |
平成16年度の研究においては、以下の研究を行った。 まず、前年度に引き続き今年度もメキシコ・中米地域への研究調査旅行を実施した(7月〜9月)。19世紀末から20世紀前半にかけて成立した「先住民共同体」において、そもそもの始まりから「治安」と「経済」の両要素の衝突とが観られたが、現在においても「アルカルデ制」と「評議会システム」の矛盾としてその葛藤は保持されていること。ただしこの齟齬は当事者にとっては、支持政党をめぐる極めて現在的かつ政治的な問題として、ある意味脱歴史化されたものとして受容されている。筆者がかつて論考において明らかにした共同体編成契機の二分化とその緊張が、この調査によって新たな観点から実証されたことになる。 さらに、理論的観点からは、社会集団をめぐる本質主義的な理論構成を避け、一方で過度の構築主義に陥ることなく分析を進めるために、次の設定を導出した。つまり、社会を構成する諸セクターの「界面」を、労働を通じて生き抜く際の重要な準拠枠組みとしての「先住民」という観点である。彼らは、貨幣と労働、さらに土地の収奪という形であらわれる「近代化」の圧倒的な現実と渉り合う中で、現在に至る生活形態を形成してきた。その過程で蓄積されてきた記憶と体験は、語りによって整序され、日々の実践へと方向付け直されるなかで、文化資本としての機能を身につけていった。この資本を動員することによ日常実践のさまざまな戦術が可能になっているのである。この観点を歴史的・実証的に提示するため、ニカラグア国立公文書館・歴史研究所およびレオン教区歴史文書館において、新聞・行政資料だけではなく、私信を含めたマニュスクリプトの読解・分析を行った。こうした実際の読解作業においては、現代の文芸理論・歴史理論の見地をも取り入れ、テキスト内部にあらわれる兆候や矛盾を手がかりにして、関係の中で立ち現れる主体の様々なありかたを浮き彫りにすることに努めた。
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Research Products
(2 results)