2004 Fiscal Year Annual Research Report
ウインドプロファイラ及び数値モデルによる梅雨前線近傍の下層大気運動の研究
Project/Area Number |
03J05136
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
手柴 充博 京都大学, 生存圏研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 地形性降水帯 / 気象庁非静力学モデル / ウインドプロファイラ / 梅雨前線 / 台風 |
Research Abstract |
本年度は、京都大学生存圏研究所所有の電波科学計算機実験装置(KDK)上で気象庁非静力学モデルを実行し、山岳による線状降水帯の再現実験を行った。計算領域は水平1000×1000km(格子間隔1km)鉛直30〜1180m(可変;32層)で鹿児島県甑島周辺を中心とする領域とし、パラメータは、雲物理と冷たい雨による降水過程を用いて、さらに初期値は鹿児島県長島における高層気象観測データを水平一様に与えた6時間予報を行った。 コントロールランとして行った再現実験により、実際よりも持続時間が短いものの約5時間持続する降水帯が再現された。次に、 (1)高度2km以下の水平風向を変える、 (2)甑島の山地を残し、他の陸地は平地にする、 (3)甑島及び長島の山地を残し、他の陸地は平地にする、 (4)長島の山地のみ取る、 (5)甑島を南西に約40km移動させる、 という感度実験を行った。その結果をまとめると、梅雨期に九州南部で発生する線状降水帯は、山岳による強制上昇で形成される降水雲と、それより風下側での水平風の収束によって形成される降水雲とが両者同時に形成されることにより、結果として非常に細長い降水帯を形成していることが明らかになった。これらの観測結果は近々論文誌に投稿予定である。また、X-BAIU観測結果については、気象研究ノートに採録が決定されている。 また、ウインドプロファイラ観測・解析法を台風0310号についても適用した。気象庁ウィンドプロファイラネットワーク(WINDAS)で観測された台風0310号中心付近の風速変動を調べた。その結果、台風の眼の内部では、平均すると下降流であるが、弱い上昇流が下降流と入れ替わりつつ見られ、従来考えられてきた一様な下降流は観測されなかった。また、低気圧性回転の風が高度方向に一定で、台風中心に対して軸対称な円筒構造を持っていることが明らかとなった。 この解析結果は、Geophysical Research Letter誌に投稿済(改訂中)である。
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Research Products
(2 results)