2003 Fiscal Year Annual Research Report
ジルコニウム錯体によるオレフィンのアリル位炭素-水素結合の活性化とその利用
Project/Area Number |
03J05162
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 和也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC 2)
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Keywords | 二塩化ジルコノセン / グリニャール反応剤 / ダブル求核剤 / ジルコノセン-オレフィン錯体 / マグネシウム金属 / ベンゼン溶媒 / 1,4-ジケトン / 1,4-ジオール |
Research Abstract |
我々の研究室ではこれまでに、二塩化ジルコノセンとブチルグリニャール反応剤から調製されるジルコノセン-1-ブテン錯体をベンゼン溶媒中、0℃で酸塩化物に対して作用させると、ホモアリルアルコールが生成することを見いだしている。本反応においては、ジルコノセン-オレフィン錯体のアリル位の水素がジルコニウム上に転位することによって生成するジルコノセン-クロチル-ヒドリド錯体が鍵となっている。 そこで、このジルコノセン-アリル-ヒドリド錯体のダブル求核剤としての特性を最大限に活かすために、分子内に二つの反応点を持つ基質との反応を試みた。その結果、1,4-ジケトンとの反応に有効に利用できることが明らかになった。ベンゼン溶媒中、0℃で二塩化ジルコノセンとプロピルグリニャール反応剤から調製されるジルコノセン-オレフィン錯体に1,4-ジケトンを作用させると、ジルコニウム上のヒドリドとアリルアニオンの二つのアニオン種が、二つのカロボニル基に対して一つずつ導入され、1,4-ジオールが良好な収率でかつ、アンチ体選択的に得られる。 さらに、ジルコノセン-クロチル-ヒドリド錯体を、1,4-ジケトンに対して作用させると、一方のカルボニル基には、ヒドリドが付加し、もう一方のカルボニル基にはクロチル基のγ位炭素が付加し、アンチ-1,4-ジオールが1,4,5位の三点の立体化学を完全に制御した形で得られることが明らかとなった。 また、本反応の一般性をより高めるため、マグネシウム金属を還元剤として用い、アルケンから直接ジルコノセン-オレフィン錯体を調製し、本反応に利用することを試みた。すなわち、THF溶媒中0℃で、オレフィンの共存下にマグネシウム金属と二塩化ジルコノセンを混合し、ジルコノセン-オレフィン錯体を調製する。ここに、1,4-ジケトンを作用させると、アンチ-1,4-ジオールが収率良く生成することが明らかとなった。本手法を用いると、グリニュール反応剤を調製する手間が省けるだけでなく、エーテルやエステルなど、種々の官能基を持つオレフィンからも、それらの官能基を損うことなく対応する1,4-ジオールを合成することができる。
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[Publications] Kazuya Fujita: "Highly Diastereoselective Tandem Reduction-Allylation Reactions of 1,4-Diketones with Zirconocene-Olefin Complexes"Angew.Chem.Int.Ed.. 42・22. 2550-2552 (2003)
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[Publications] Kazuya Fujita: "Triethylborane-Induced-Radical Allylation Reaction with Zirconocene-Olefin Complex"Org.Lett.. 5・17. 593-595 (2004)