2003 Fiscal Year Annual Research Report
森林生態系における溶存有機態炭素動態の決定要因の解明
Project/Area Number |
03J05307
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川崎 雅俊 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 溶存有機態炭素 / 森林生態系 / 水文過程 / 流城 / 土壌生成 |
Research Abstract |
森林生態系における溶存有機態炭素(DOC)動態を明らかにすることは,栄養物質循環の解明や,土壌生成のメカニズムの解明のために重要である.さらに,森林生態系から流出する溶存物質が流入する陸水生態系にとっても,エネルギー源として,また,陸水の光環境を制御する物質として重視されている.加えて近年,地球温暖化や土地利用形態の変化といった環境変動に対し森林生態系がどのような応答を示すのか,また,森林生態系が人為起源のCO_2の吸収源であるのか否か,についての関心が高まるなかで,DOCが炭素循環に果たす役割の重要性が,認知されつつある.しかしながら、森林生態系内部におけるDOC動態は、生物活動や地球化学的反応により溶液から除去される影響や、水文過程の変動によりDOCの移動形態が変動する影響を受ける為、何が決定要因であるかは不明であった. そこで本研究課題では、原位置における観測結果を元に、降水量・気温・土壌などの環境要因の違いが、DOC動態にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることで、森林生態系内部でのDOC動態の決定要因の検討を試みている.本年度は、プロットスケールに着目し、DOC濃度の経時変動や、土壌生成の発達段階の異なる2流域でのDOC濃度変動の違いを観測した.その結果、微生物活動がDOC動態に及ぼす影響は小さく、また、水文過程の変動が、DOC濃度を制御する可能性も小さかった。さらに、土壌生成の発達段階の違いもDOC濃度変動に大きな影響を及ぼさなかった。そこで、土壌溶液の水質に着目した結果、両プロット共にDOC濃度変動が一定になる場所で有機態Alが検出されなくなることから、有機錯体形成による沈殿が、DOC動態に大きな影響を及ぼしていることが分かった.また、DOC除去量は、有機錯体を形成できるDOCが有機物層でどれだけ水に付加されるかが、重要である可能性が示唆された.
|