2003 Fiscal Year Annual Research Report
藻食魚クロソラスズメダイとそのなわばり内に純群落を形成する藻類との相利共生
Project/Area Number |
03J05343
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
畑 啓生 京都大学, 大学院・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 栽培共生 / クロソラスズメダイ / ハタケイトグサ / 藻園 / 藻園管理 / サンゴ礁 |
Research Abstract |
サンゴ礁は海の生態系の中で最も生物多様性が高い場所として知られており、多様な藻食性生物のグレージングによって、海藻群落の発達は著しく制限されている。しかしそのようなラグーンの中には多くの種のスズメダイ類のなわばりが各所に点在しており、そのなわばり内にはしばしば海藻が繁茂している。これらのスズメダイ類の多くは、なわばりを防衛し、その中に生育する藻類を主食としており、そのような藻類群落は藻園と呼ばれてきた。それらのスズメダイ類の中で、クロソラスズメダイは特徴的な糸状紅藻ハタケイトグサの単作の藻園を例外的に維持している。これまでの研究で、単作の藻園管理にはクロソラスズメダイによる除藻と侵入する藻食者の徹底的な排除が見られることを示した。本研究は、その藻園管理の影響を評価し、さらにクロソラスズメダイとその藻園内に生育する藻類との生態学的関係を明らかにしようとしたものである。 沖縄県瀬底島のサンゴ礁において、クロソラスズメダイの藻園からのケージによる囲い出し実験を行ない、ケージ内の藻類群落の遷移を追跡した。その結果、クロソラスズメダイの藻園管理を取り除くと、ハタケイトグサは本来除藻されるべき藻類に被覆され、藻園は崩壊することが明らかになった。この結果は、クロソラスズメダイが藻園管理によって、藻類遷移を押しとどめ、本来はパイオニア種であるハタケイトグサの単作を維持していることを示唆している。ハタケイトグサはなわばり外にも見られず、クロソラスズメダイの管理下のみで生存・繁殖できる。また、クロソラスズメダイはハタケイトグサを主な餌として利用・依存している。すなわち、両者は防衛という奉仕と同化産物という報酬を提供しあう栽培共生の関係にある。このような発達した共生関係は、ヒトと栽培植物とに次ぐ新たな例であるといえる。
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Research Products
(1 results)