2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J05356
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
富樫 英 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 細胞接着分子 / 樹状突起 / ネクチン / カドヘリン |
Research Abstract |
神経細胞の軸索と樹状突起は、互いが出会うとシナプスを形成するが、軸索どうし、樹状突起どうしでは、例外を除き安定に接着せずシナプスを形成しない。そこで、その分子機構を明らかにする目的で、様々な遺伝子を神経細胞に発現させることで神経細胞の樹状突起間の接着が誘導されるかどうかを検討した。ネクチンは生体で幅広く発現している細胞間接着分子であり、神経系においてネクチン-1、と-3が主に発現している。これらはシナプスにも局在して接着に働いている。またネクチンはホモフィリックな接着だけでなく、ヘテロフィリックな接着のほうがより強い接着を生じさせる。実際、軸索にはネクチン-1、樹状突起にはネクチン-3が発現しており、シナプスにおいてネクチンはヘテロフィリックに働いている。そこで本来軸索だけ、あるいは樹状突起にだけ発現が見られるネクチンの局在を撹乱すれば、軸索・樹状突起間の識別が出来なくなり、軸索間、樹状突起間でカドヘリン接着が誘導できないかと考えた。これまでの結果から神経細胞内の局在にはネクチンの細胞内領域が必要であることがわかっていたので、ネクチン-1と3の細胞内外のドメインを入れ替えたキメラ分子を作成した。作成したキメラ分子によって本来軸索だけにあるネクチン-1を樹状突起に(N13キメラ分子)、また樹状突起だけにあるネクチン-3を軸索に発現させることが出来た(N31キメラ分子)。そして、これらキメラ分子を発現の結果、N13キメラ分子を発現させた神経細胞において、本来、放射状に伸びる樹状突起が、自らの樹状突起に接着して絡み合っている異常が観察された。これは神経細胞がもともと樹状突起において発現しているネクチン-3と導入されたN13キメラ分子の細胞外が強く接着に働くことにより自己接着が誘導されたものと考えられる。以上の結果は、神経細胞において軸索・樹状突起間の識別機構の存在を示唆するものである。
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