2004 Fiscal Year Annual Research Report
MAPキナーゼERKによる細胞運動制御の分子機構の解析
Project/Area Number |
03J05357
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松林 完 東京大学, 医学部・附属病院, 研究拠点形成特任教員(特任助手)
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Keywords | 上皮細胞層 / 協調的運動 / シグナル伝達 / ERK / MAPキナーゼ / 正のフィードバック |
Research Abstract |
細胞運動は胚発生、創傷治癒、癌の転移など、多くの生理的・病理的現象に深く関わっている。胚発生や創傷治癒など多くの局面において、上皮細胞の層は層全体が一体となって運動する。繊維芽細胞や白血球など単独の細胞の運動機構については多くの研究がなされているが、上記のような細胞層の協調的運動を制御する機構についての理解はほとんど進んでいない。我々はin vitro wound healingの系を用いてこの機構を解析した。我々は、MDCK上皮細胞の層に傷をつけるとERK MAPキナーゼの活性化が傷の際で始まり、傷から離れた細胞に向かって伝播することを見い出した。ERK活性化の伝播は細胞層の協調的運動と並行しており、ERKの活性を阻害すると細胞層の運動は阻害された。逆に、アクチン重合を阻害することにより細胞層の運動を阻害すると、ERK活性化の伝播も阻害された。これらの結果は、細胞運動とERK活性化の間に正のフィードバックループが存在し、これによって細胞層の協調的運動が促進されていることを示す。さらに我々は、Srcファミリーキナーゼの阻害剤が細胞層の運動もERK活性化の伝播も阻害することを見い出した。これは上記のフィードバック機構にSrcファミリーキナーゼが関与することを示唆している。これらの結果は、シグナル(すなわちERKの活性化)の上皮層内伝播が細胞層の協調的運動を制御する機構を初めて示したものである。以上の結果をCurrent Biology誌に発表した。また我々は、上皮細胞層の運動時にERKのみならずp38の活性化が起こることを見い出した。活性化型ERKが細胞質全体に存在するのに対し、活性化型p38は細胞の辺縁に局在し、細胞接着の制御に関与しているのではないかと考えられた。
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Research Products
(1 results)