2003 Fiscal Year Annual Research Report
膜タンパク構造形成原理の解明を目指したヘリックス間・ヘリックス-脂質間力の計測
Project/Area Number |
03J05377
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
矢野 義明 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 膜貫通ヘリックス / 膜タンパク質フォールディング / ヘリックス双極子 / 蛍光励起エネルギー移動 |
Research Abstract |
生体膜環境でのヘリックス間・ヘリックス-脂質間相互作用の熱力学を系統的に解明するための第一歩として、ホストペプチドX-(AALALAA)_3-Y[X=NBD,Y=NH_2(I)or X=Ac,Y=NHCH_2CH_2-S-DABMI(II)]を新規に合成し、典型的なリン脂質パルミトイルオレオイルフォスファチヂルコリン(POPC)二分子膜中でのヘリックスの自己会合力の計測を試みた。これまで用いてきたペプチドX-(LALAAAA)_3-NH_2[X=NBD or TMR]に対し、ロイシン残基がN末端側に偏らないよう配列を変更している。赤外偏光全反射吸収スペクトル測定により、このペプチドがPOPC二分子膜中において安定な膜貫通ヘリックスを形成することを確認した(5-55℃)。蛍光励起エネルギー移動のドナーNBDとアクセプターDABMIがN末端とC末端にそれぞれラベルされ、しかもこの色素ペアの臨界移動距離が約25Aであるため、逆平行型の会合だけを特異的に検出し、また色素の膜平面上におけるランダム分布に由来するspontaneous transferの影響を最小限に押さえることができる。会合測定は(I)のNBD蛍光が自己消光を起こさない濃度範囲(0.05〜1mol%)で行った。この範囲でヘリックスは主として単量体-逆平行型二量体間平衡にあると考えられる。25℃での会合自由エネルギー変化は約-13kJ/molで、X-(LALAAAA)_3-NH_2のそれ(約-13kJ/mol)とほぼ同じであった。また会合エンタルピー、エントロピー変化はそれぞれ約-26kJ/mol,約-42J/K/molであり、この会合がエンタルピー駆動であることが明らかになった。次に、ホストペプチド配列の中心にSerゲスト残基を導入したペプチドX-AALALAA AALSLAA AALALAA-Yを合成し、水素結合性を持つ側鎖が膜貫通ヘリックス間会合に及ぼす影響を検討した。赤外偏光全反射吸収スペクトル測定から、親水性側鎖を膜貫通領域に1つ持つこのペプチドもホストペプチド同様に安定な膜貫通ヘリックスを形成することがわかった。ペプチドにラベルされたNBD蛍光が、0.2mol%付近の低濃度から自己消光を示し始めたことから、このペプチドはホストに比べ強い自己会合力を持つと考えられる。今後単量体一逆平行型二量体間平衡にあると予想される0.005〜0.05mol%の濃度範囲で会合力を計測する。
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