2004 Fiscal Year Annual Research Report
照射精子受精卵におけるS期チェックポイントにかかわるp53機能ドメインの解析
Project/Area Number |
03J05407
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
豊島 めぐみ 京都大学, 放射線生物研究センター, 特別研究員(DC2)
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Keywords | X線 / マウス / 受精卵 / S期チェックポイント / p53 |
Research Abstract |
我々は,マウス初期胚の放射線応答を解析し,p53依存性S期チェックポイントを発見している.今回は,精製したp53タンパクを微少注入する方法を用い,更なるp53の機能ドメインの解析を行った. 放射線応答では,損傷感知キナーゼとしてATM,ATRが知られており,p53はこれらによりリン酸化されることで活性化される.ATM,ATRを共に活性阻害するcaffeineと,ATM阻害剤であるwortmanninを用いてS期チェックポイントへの影響を調べた.照射精子受精卵でのDNA合成抑制は双方のいずれの投与でも解除された.これよりS期チェックポイントにはATMが関与していることが示唆された.次に,p53タンパクのリン酸化部位に変異を導入したタンパクを照射精子受精卵に微少注入したがS期チェックポイントの阻害はみられず,DNA合成抑制を示した.このことより,S期チェックポイントにはATMによるp53タンパクのリン酸化は大きな役割を果たしていないかもしれない. p53は転写活性化因子として知られている.p53の転写活性化能がS期チェックポイントに必要かどうか調べた.転写活性化領域に変異の入ったp53タンパクをp53ノックアウト受精卵に微少注入したところ,DNA合成抑制が見られた.また,転写阻害剤であるα-amanitinを投与してもDNA合成には影響がなかった.これらは,S期チェックポイントにはp53の転写活性化は必要でないことを示している. 一方,p53タンパクの配列特異的DNA結合領域に変異の入ったp53タンパクをp53ノックアウト照射精子受精卵に微少注入したところ,DNA合成抑制はみられなくなった.また,p53野生型を用いてドミナントネガティブ効果を試みたところDNA合成抑制が阻害された. 以上より,p53のDNA結合が転写とは異なる機構を介してS期チェックポイントに関与していることが明らかとなった.しかし,ATMによるp53のリン酸化は必要としないことから,ATMがターゲットとする第三の未知のタンパクとp53が何らかの働きでS期チェックポイントに関与していることが示唆される.
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Research Products
(1 results)