2004 Fiscal Year Annual Research Report
演劇俳優の熟達化における演技計画・演技遂行に対する視点の役割
Project/Area Number |
03J05445
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安藤 花恵 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 俳優 / 熟達化 / 演劇 / 視点 |
Research Abstract |
(1)初心者、中間、準熟達者の3群の俳優に演技計画を語らせ、その発話の分析をおこなった。その結果、初心者は演技計画まで到らず、脚本解釈を考えるにとどまることが多い一方、準熟達者は脚本解釈を表現するための演技計画を多く立てていることが示された。中間群は、初心者に近い者や準熟達者に近い者が混在していた。また、初心者は脚本を読んで思いついたものをそのまま採用することが多いのに対し、準熟達者は俳優の視点から脚本解釈を考え、俳優の視点と観客の視点から演技計画を立てるようになることが示された。この研究については、研究科紀要第51号に掲載予定である。 (2)演技が難しいとされる「痛み」に関して、初心者、中間、準熟達者の3群の俳優各12名ずつに演技をしてもらい、それを撮影して一般大学生による評定をおこなった。その結果、初心者・中間群は、複雑な演技になると演技の自然さが落ちてオーバーな演技になるのに対し、準熟達者は複雑な演技でも自然さが落ちないことが示された。初心者・中間群の演技は、オーバーになる分、何を表そうとしているかという意図がわかりやすくなり、確信を持って何を表しているのかが評定者にわかるという結果であった。この研究については、17年度の日本心理学会・日本認知科学会にて発表予定である。 (3)演技経験が長くなると、人の演技を見る際、演技の表面的でない部分も見ることができるようになり、その結果、演技を正しく評価したり、多様な評価ができるようになることを15年度の研究で示した。今年度は、この評価能力の熟達が、観劇経験に支えられているのかどうかを明らかにするため、演劇は未経験で観劇をよくおこなうという被験者に対して実験をおこない、観劇経験を積むだけでは、このような熟達は見られないことを明らかにした。
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