2003 Fiscal Year Annual Research Report
ジョン・ロックにおける国制と経済の観点からの所有権論のコンテクスト分析
Project/Area Number |
03J05450
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
門 亜樹子 京都大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | ジョン・ロック / ロバート・フィルマー / プロパティ / トレード / コモンウェルスの福祉 / コモンウェルスマンの系譜 / ジェントルマン / ブリテンの経済発展 |
Research Abstract |
今年度はジョン・ロックのプロパティ(所有権)概念の形成とトレード概念の形成を中心に研究し、前者の成果をまとめた論文は現在投稿中であり、後者の方は現在論文を執筆中である。今年度の補助金は主に上記の研究を遂行するための文献の購入費にあてられた。 1.ロックのプロパティ概念の形成に関しては、「ジョン・ロックにおけるプロパティ概念の形成について」という題名の論文を現在投稿中である。ロックは主著『統治二論』を、排斥法危機下における家父長制論者のロバート・フィルマー著作集の再刊を受けて執筆したが、その中でフィルマーの議論が「父たる身分」と「プロパティ(独占的領有権)」に基礎付けられたものであると整理した。独占的領有権とはアダムが全ての被造物に対して有する独占的な所有権であり、後世の君主に継承されるとして、絶対君主制の正当化のために用いられた。『統治二論』では以上の議論に論駁し、臣民のプロパティ(生命・自由・財産)の保全を市民社会の第一の目的に押し上げた。絶対・恣意的為政者による臣民のプロパティ侵害の危険に対する認識が存在していなかった。この論文では、フィルマーとの思想的対決から形成されてきたことについて明らかにした。 2.ロックのトレード概念に関しては、「ジョン・ロックのトレード概念の形成について(仮題)」と題する論文を現在執筆中である。従来ロックの経済論文は、日本では労働所有権の生産過程、経済論文の経済循環するものの、P.ケリーを初めとして時局論文にすぎないとして、『統治二論』との関連を否定する見解が主流であった。しかし前者に関してはであり、後者に関しては無視している。 ロックは経済論文においてトレードをイングランドを富ませるものとして重視している。 『統治二論』においてロックはコモンウェルスの福祉を目的とすると述べている。 英蘭戦争を契機とする経済発展は、トレードをコモンウェルスマンの系譜からロックの経済認識を明らかにすることを目的としている。経済の担い手であるジェントルマン 将来的にはジョン・ロックの認識として、『教育論』を包含する予定である。
|