2003 Fiscal Year Annual Research Report
スピノザ哲学における自由の問題の構造論的方法による存在論的研究
Project/Area Number |
03J05462
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 尚 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スピノザ / 自由 / 責任 / 必然性 / 偶然性 |
Research Abstract |
報告者は当年の特別奨励費研究の成果をまず「関西倫理学会」第2003年度大会において「スピノザにおける責任の概念」という題目で発表した。本研究課題の主題である「自由の問題」との関連から言うと、そもそも哲学において自由が問題となることの理由のひとつに、自由には道徳的責任の可能性が懸かっているということがあげられる。したがって自由の問題で扱われる「自由」概念は同時に道徳的責任の概念を可能にするほど十分な内実を備えたものでなければならない。この発表において報告者は、決定論的な体系のうちで把握されるスピノザの「自由」概念が必ずしも「責任」の概念を排除するものではなく、むしろ独特な内実を備えた「責任」概念を成立させるものであることを明らかにした。つまりスピノザにおける「責任」概念の本質が自ら自身の原因性の連関を真に認識することに存するということを指摘したことが本発表の成果であり独自性である。 次に報告者は「『エチカ』における必然性と偶然性」という題目の論文を執筆した。「自由」の概念は必然性や偶然性といったいわゆる様相概念ときわめて密接に連関しており、スピノザの「自由」概念の内実を解明するためには様相概念の問題に取り組むことは避けて通ることができない。他方で「自然の内には偶然的なものは存在しない」というスピノザの言葉はたいへん有名であるが、ここにおいて言われている偶然性の内実が論究されることはほとんど為されることがない。それゆえ本論文において報告者はスピノザの哲学における必然性および偶然性の本質的意味を究明することを課題とした。必然性を神の必然性として、そして偶然性を人間的現象として解明したことが本論文の独創的な点であると言える。
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Research Products
(1 results)