2004 Fiscal Year Annual Research Report
スピノザ哲学における自由の問題の構造論的方法による存在論的研究
Project/Area Number |
03J05462
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 尚 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 実体 / 自己原因 / 知性 / 本質 / 真なる観念 / 属性 / 幾何学的論証 |
Research Abstract |
報告者の平成十六年度研究業績は「人間存在論」11号への論文「『エチカ』における論証-いかにしてスピノザは実体の自己原因性を証明したか?」の掲載である。この論文において報告者が取り組んだ課題は、(1)『エチカ』の出発点である定義・公理の部に登場する「存在」と「認識」との連関をどのように理解すべきかという問題と、(2)「実体は自己原因である」というスピノザの主要テーゼを彼が具体的にどのようなステップを経て証明するのかの解明である。 (1)に関して報告者はスピノザにおけるintelligere概念の重要性を指摘することによって『エチカ』における定義・公理をどのように理解すべきかを示した。ここではintelligereの概念が「知性」や「真なる観念」と内容的な連関を有していることが確認された。加えて「存在」と「認識」との連関と、「形相的本質」と「想念的本質」という伝統的な哲学概念との関係を明らかにしたことは、従来の研究には見られなかった視点であると主張しうる。 (2)に関しては報告者は、実体の自己原因性に関するスピノザの有名な命題が、単に独断的な主張ではなしに、論理的・幾何学的な論証を通じて証明された「定理」である点に着目し、この命題のあまり知られていない証明課程を詳細に説明した。これに際して同時にスピノザの「属性」概念の内実を存在論的な視点から解明するという作業もなされた。
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Research Products
(1 results)