2003 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンザルにおける音声応答の成立要因:ヒト音声言語との比較研究
Project/Area Number |
03J05472
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
香田 啓貴 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ニホンザル / 音声 / 乳児 / 泣き声 |
Research Abstract |
本年度は以下のことを行った。まず鹿児島県屋久島に生息するニホンザルの野生群を対象に発声頻度の調査、音声が発声される文脈の調査を行った。修士研究までに明らかにした音声の可変性の研究を遂行する上で、発声頻度や発声が行われる文脈を分析することは基礎的資料収集の上で重要と思われたためである。調査の結果、他の地域のニホンザル野生群と比べて、屋久島野生群の発声頻度は高いことが示唆された。これは屋久島野生群においては視覚的な交渉を取りにくい見通しの悪い環境であり、その要因が影響していると思われる。発声頻度が高いことは、音声の学習の機会が高いことを示しており、音声の可変性と何らかの関連性があることが推察される。 また、音声コミュニケーションの霊長類的な基盤を明らかにするため、予備的にヒト乳児の泣き声の発達的な変化を調査した。ヒト乳児の泣き声とサルの音声は類似したメカニズムにより支配されていることが知られており、ヒト乳児の泣き声とサルの音声を比較することは有効と考えた。先行研究の報告のようにヒト乳児の泣き声は生後1年は声の高さが高くなっていくことが確認された。この傾向はニホンザルでも確認できると考えられ、音声に関して同じ発達過程をたどると推察される。 本年度の調査の結果から、ニホンザルの音声の可変性に関して環境要因と学習の効果を検討する必要があると考えられた。ヒト乳児で得られた知見と照らし合わせるためにサルの音声発達の過程を検討する必要があると考えられた。
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