2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J05482
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
入谷 寛 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 量子コホモロジー / トーリック多様体 / ミラー対称性 / 収束性 / 量子Lefschetz / 評価つき冪級数環 / ホモロジカル幾何学 / Gromov-Witten不変量 |
Research Abstract |
今年度は,量子コホモロジーの収束性の研究およびネフとは限らないトーリック多様体のミラー対称性,ベクトル空間の非可換群によるシンプレクティック商に対するホモロジカル幾何学の研究を行った.量子コホモロジーの収束性の問題は,多様体がFanoではない場合に問題となる.報告者は今年度に提出したプレプリントにおいて一般ミラー変換を導入し,トーリック多様体内の完全交差に対する量子コホモロジーを計算する処方箋を示した.この一般ミラー変換において,多様体の接束の第一chern類がnefではない場合は,収束冪級数の範囲内で計算をすることはできず,形式冪級数を用いる必要があることがわかった.そこで報告者は形式冪級数であるがその係数がある評価を満たす「評価つき冪級数環」を導入し,その環で議論をすることによって,トーリック多様体内の完全交差に対する量子コホモロジーが収束する構造定数を持つことを示した.報告者はさらにこの方法を一般化して,CoatesとGiventalの量子Lefschetz定理と量子コホモロジーの収束性とが整合的であることを示した.すなわち,量子Lefschetz定理はある多様体Xの量子コホモロジーからその多様体内の完全交差Yの量子コホモロジーを計算するものであるが,もしXの量子コホモロジーが収束するならば,Yの量子コホモロジーのうち,量子Lefschetz定理で計算される構造定数はすべて収束することが示された.以上の結果については現在論文を執筆中である.一方,トーラス作用をもつ多様体に対しては量子コホモロジーの計算方法が確立されている.そこで報告者はこのような多様体に対して量子コホモロジーの収束性を示し,さらに一般に種数gを固定したときのdescendent Gromov-Witten potentialが収束することを組み合わせ論的な議論で示した.この結果についても現在論文を執筆中である.またBertram, Ciocan-Fontanin, Kimらによる可換商と非可換商の量子コホモロジーの関係についての論文に動機付けられて,ベクトル空間の非可換シンプレクティック商のホモロジカル幾何学についても研究を進めている.この研究によりGrassmann多様体,Flag多様体の量子コホモロジーについての新しい知見が期待される.
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