2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J05490
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北畑 裕之 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非平衡開放系 / 分子機械 / 界面張力 / 履歴 / 化学振動反応 / Marangoni対流 / 自己組織化 / 相分離 |
Research Abstract |
本研究は、生物を非平衡開放系として捉えることによって、物理的に考察を進めようとするものである。具体的に実験モデルを構築し解析することで、分子機械、そして、非平衡開放系における物理の理解を深めていくことを目的とする。今年度は、非平衡開放系における時空間の自己秩序形成の機構を実験・理論の両面から明らかにしてきた。 1,化学振動反応系を用いた実験系において、これまでに化学反応と同期した対流が発生することを見出してきた。そのメカニズムとして、自発的に生成した化学波が化学ポテンシャル勾配を引き起こし、それが、界面張力の勾配として方向性のある流れを生み出しているということを数値計算と理論的な解析によって明らかにした。 2,油水二相分離系において、レーザーを照射することで定常的な油滴が捕捉される、あるいは、定常的に水滴が生成消滅を繰り返すようなパターンが発生することが見出されている。そのメカニズムについて考察し、レーザーによるエネルギー注入がそのような時空間パターンを生成していることを明らかにした。 3,水道から流れ出る水の下に容器を置くことにより、容器の中での水のたまり方に時空間的なパターンが現れることを既に報告してきた。そのメカニズムについて、非平衡開放系でのエネルギー注入という立場から現象論的なモデルを構築し、そのような時空間パターンが定常的な注入によるものであることを明らかにした。 4,樟脳-水系において、非平衡条件のために表面での化学ポテンシャルの勾配が維持されることを利用して、樟脳の昇華によるエネルギーを対流による運動エネルギーへと変換するような系を構築、考察した。 以上の成果は、直接的には分子機械の動作原理についての研究ではないが、非平衡開放系という大きな枠組みで見て、共通点、相違点を探っていくことにより、分子機械の動作原理解明に大きく貢献するものと考えられる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 北畑裕之, 山田暁子, 中田聡: "Mode bifurcation by pouring water into a cup"Journal of Chemical Physics. 119. 4811 (2003)
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[Publications] 向井定篤, 馬籠信之, 北畑裕之, 吉川研一: "Liquid/liquid dynamic phase separation induced by a focused laser"Applied Physics Letters. 83. 2557 (2003)
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[Publications] 北畑裕之, 馬籠信之, 吉川研一: "Convective flow driven by chemical reaction"Proceedings of Slow Dynamics in Complex Systems. (掲載予定)(2004.8). (2004)
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[Publications] 北畑裕之, 廣松真一, 土井幸重, 中田聡, Mohammed Rafiqul Islam: "Self-motion of a camphor disk coupled with convection"Physical Chemistry Chemical Physics. (掲載予定).
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[Publications] 北畑裕之, 吉川研一: "「非線形・非平衡現象の数理」第2巻 第1章「化学・生物の世界のリズム」"東京大学出版会(出版予定).