2004 Fiscal Year Annual Research Report
培養心筋細胞系における拍動パターンの時空間ダイナミクスとその生物学的意義
Project/Area Number |
03J05494
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
原田 崇広 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 分子モーター / ランジュバン系 / 揺動散逸定理 / エネルギー論 / 細胞共培養系 / クラスター形成 / 相分離 / 同期現象 |
Research Abstract |
本研究では、心筋細胞の自発的拍動を非平衡開放系における動的な運動としてとらえる事を目標としている。本年度も前年度に引き続いて、筋収縮の素過程を担う分子モーターの運動に関する非平衡統計力学的な基礎研究と、細胞集団レベルにおけるマクロな活動に関する実験との両面から研究を進めた。 まず、分子モーターの運動については、前年度に発表した、ラチェットモデルにおける揺動散逸関係(ゆらぎと応答の関係)の破れを物理的に意味づけるため、系のエネルギー消費率との関係を現象論的に予想した。その結果として得られたエネルギー効率の表式はキネシンの実験結果を定量的に説明できることが分かった(この結果はEurophysics Lettersに発表した)。しかし一般の非線形な非平衡系については、現象論的な方法ではうまく行かない場合があったので、より普遍性の高い枠組みを目指し、ラチェットモデルの詳しい理論解析を行った。その結果、ラチェットモデルを記述するランジュバン方程式を、実験的に測定される応答関数や相関関数が明示的に現れる形式へと変形できることが示された(この結果はJournal of Physics A : Mathematical and Generalに発表した)。さらにその表式を用いて系のエネルギー収支を計算したところ、系のエネルギー消費率を揺動散逸関係の破れと直接対応づける等式を得た。この結果は広いクラスの非平衡系について正確に成り立つことが分かったので、分子モーターの実験的研究に理論的基盤を与えると期待される(この結果はプレプリントとして発表しており、現在雑誌にも投稿中である)。 また、細胞培養系の実験については、前年度に発見した、心筋細胞の初代培養系でみられるクラスター状構造の形成のメカニズムを実験的に調べた。その結果、心筋細胞の拍動を阻害する薬品を加えると、拍動の停止と共にクラスターの形成も阻害されることが分かった。また、種々の条件下でクラスターの形成の仕方を調べ、系の相図を作成した。この結果をいくつかの研究会で発表し、また現在投稿論文を準備中である。
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