2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J05561
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植田 一石 京都大学, 理学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | ホモロジー的ミラー対称性 / Dブレーン / フレアコホモロジー |
Research Abstract |
カラビ・ヤウ多様体が必ず対で存在し、一方の複素幾何学と他方のシンプレクティック幾何学の間に不思議な関係が存在するというミラー対称性は、数理物理学の弦理論との関わりで近年活発に研究されている。これらの現象を統一的に理解するための枠組みとして、コンセビッチは1994年にホモロジー的ミラー対称性という予想を提唱した。これはミラー対称性の背後には連接層の導来圏とラグランジュ部分多様体の深谷圏の導来圏の三角圏としての同値があるという予想で、具体的な場合に証明するのは非常に難しい。Dブレーンとはこの同値な圏の対象を指す。したがってそれは文脈によって連接層であったりラグランジュ部分多様体であったりするのだが、この見た目がかけ離れている二つの対象を統一的に扱うことが研究の目標である。ミラー対称性はもともとコンパクトなカラビ・ヤウ多様体に対するものだったが、適当な修正を加えることでコンパクトでない場合にも定式化できる。今年度の研究において、私はホモロジー的ミラー対称性をトーリック・デル・ペッツォ曲面の正準束の全空間というコンパクトでないカラビ・ヤウ多様体に対して証明した。この場合、複素幾何側において、連接層の導来圏はベイリンソン、オルロフらによる具体的な表示を持ち、ホモロジー的ミラー対称性の証明はシンプレクティック側における消滅サイクルのフレアコホモロジーの計算に帰着される。この計算は複素平面内の単位円盤からの概正則写像を数え上げることによってなされ、その結果が複素側における代数幾何的な量と一致するのは非常に非自明である。
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