2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J05561
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植田 一石 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子コホモロジー / 連接層 / 導来圏 / ストークス行列 |
Research Abstract |
複素数体上の滑らかな射影多様体に対し、そのGromov-Witten不変量はこの空間のシンプレクティック幾何的な不変量で、与えられた種数の通常二重点のみを持つ曲線の個数のような数え上げ幾何学的に興味深い情報を含んでいる.このGromov-Witten不変量の母関数を使うことによって、与えられた空間のコホモロジー群にFrobenius多様体の構造が入り、特異点論や可積分系などの数学の他の分野との関わりが生まれる.特に、可積分系とのつながりの一端として、Gromov-Witten不変量から射影直線上の常微分方程式のモノドロミー保存変形を与えることができ、Frobenius多様体の構造の入ったコホモロジー群はこのモノドロミー保存変形のパラメーター空間になる.この常微分方程式は原点に不確定特異点を持ち、Frobenius多様体が半単純性というある良い条件を満たすとき、この不確定特異点におけるモノドロミーデータとしてStokes行列が定義できる.モノドロミー保存変形なので、このStokes行列はFrobenius多様体の一般の点の取り方によらず、もとの多様体のシンプレクティック幾何的な不変量を与える.このStokes行列に関して、Kontsevich、Zaslow、Dubrovinらによる以下のような予想がある:滑らかな射影多様体に対し、その連接層の導来圏がexceptional collectionと呼ばれる特別な性質を持った有限個の対象の組で生成されることと、その多様体のGromov-Witten不変量から決まるFrobenius多様体が半単純であることは同値で、この時、対応するStokes行列は連接層の導来圏の生成元の間の射のEuler数で与えられる.今年度の研究において、筆者はこの予想をGrassmann多様体およびいくつかのトーリック曲面に対して証明した.この予想はGromov-Witten不変量というシンプレクティック幾何的な不変量と連接層の導来圏という代数幾何的な対象の間に不思議な関係があることを示しており、筆者の結果以前にはDubrovinとGuzzettiによる射影空間の場合しか知られていなかった.筆者によるGrassmann多様体の場合の証明は、Grassmann多様体と射影空間のGromov-Witten不変量の関係に関するHori-Vafa予想(Bertram-Ciocan-Fontanine-Kimの定理)、射影空間の場合のStokes行列、Kapranovによる連接層の導来圏の生成元、それにBorel-Weil理論を使う.トーリック曲面の場合の証明は、Giventalのミラー定理と消滅サイクルの交点数の具体的な計算に基づく.
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