2003 Fiscal Year Annual Research Report
新規軸不斉としてのビピリジンとそのジオキシドの設計と合成
Project/Area Number |
03J05565
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
喜名 朝人 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 軸不斉ビピリジンジオキシド / 不斉アリル化反応 / π-π相互作用 / 不斉ヘック反応 / 同位体効果 / 速度論分割 |
Research Abstract |
1.軸不斉ビピリジンジオキシドの合成および利用 (1)研究目的 軸不斉ビピリジンおよびそのジオキシドに関する研究は、未だ手をつけられていない分野である.そこで私は新規軸不斉ビピリジンジオキシドの合成法の開発、およびその性質についての知見を得ることを目的として,本年度の研究を行った. (2)研究成果 近年私は,軸不斉ビピリジンジオキシドの新規合成法を開発した.これにより合成された軸不斉ビピリジンジオキシドは,アリルトリクロロシランを用いたアリールアルデヒドのアリル化反応において高い触媒活性と高いエナンチオ選択性を示した.このとき軸不斉ビピリジンジオキシド上のフェニル置換基が重要な役割を担っていることが明らかとなった.しかしながら,この以前の合成法は触媒機能の詳細な調整にとって重要となる置換基の導入段階が,多段階合成の最初のステップにあり,触媒の多様化には困難を伴うものであった. そこで,多様化部位をあらかじめ導入した有用な合成中間体の合成を計画し,合成最終段階におけるパラジウム触媒を用いたクロスカップリング反応により様々な置換基を容易に導入する新たなルートの開発に成功した.様々な電子的および立体的な特性をもつビピリジンジオキシドの利用により,アリル化反応における高い触媒活性が,触媒アリール基とアリールアルデヒドとの間でのπ-π相互作用の影響によるものであることが示唆された. 2.留学 私は2003年10月から12月にかけて,英国ブリストル大学ガイ・C・ルロイドジョーンズ研究室に滞在し,「不斉ヘック反応における機構考察」および「R-CHD-R'タイプの化合物の速度論分割における一次速度論的同位体効果の温度依存性」の二つのテーマに携わった.しかしながら,時間の制約上後者のテーマの研究コンセプトが理論的に正しいものであることを示すに留まった.
|