2005 Fiscal Year Annual Research Report
フラーレンのσ骨格変換反応の開発および内包フラーレン類の化学的合成に関する研究
Project/Area Number |
03J05606
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 理尚 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フラーレン / 開口フラーレン / 内包フラーレン / 水素分子 / 分子手術 / 温度可変NMR / 2分子内包 / 水素貯蔵 |
Research Abstract |
これまでの研究により、フラーレンC_<60>の骨格内側に有機化学反応を用いて水素分子を閉じ込める手法を開発することに成功した。この手法を内部空間のより大きいC_<70>について適用できれば、C_<60>では不可能であった2個の水素分子の導入が期待できる。そこで、まず3段階の有機反応によりC_<70>の骨格表面上に13員環の開口部を設け、この粉末固体に890気圧の高圧水素を200℃で8時間接触させた。回収した粉末を溶媒に全て溶解させて^1H NMRを測定すると、-16.51ppmという極めて高磁場にシャープなシングレットが観測され、さらに-15.22ppmにも小さいシグナルが観測された。DFT計算によるNMRケミカルシフトと実測値との非常によい一致に基づき、前者のシグナルは水素を1分子内包した誘導体(収率97%)、後者は水素を2分子内包したもの(収率3%)に対応すると帰属された。そこで、温度可変NMRを測定したところ、確かに2分子内包体のシグナルは-100℃で明確に2本のシグナルに分離し、2個の水素分子がフラーレン骨格内部で互いの位置を交換する活性化エネルギーは8.0kcal/molであることが明らかとなった。 次いで、C_<60>について先に確立した手法を用いて、C_<70>骨格構造の化学的修復を行った。すなわち、まずm-CPBA酸化および可視光照射によって開口部の硫黄を除去し、McMurry反応で開口部を8員環へと縮小したのち、最後に、この粉末固体を真空下400℃で加熱することにより有機残基を全て脱離させ、これまでに例のなかった水素を1分子および2分子内包したC_<70>(H_2@C_<70>および(H_2)_2@C_<70>)の合成に初めて成功した。また、H_2@C_<70>はリサイクルHPLCによって容易に単離することができ、紫外可視吸収、赤外吸収などのスペクトル的性質についても明らかにした。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Organic and Organometallic Derivatives of Dihydrogen-Encapsulated [60]Fullerene2005
Author(s)
Matsuo, Y., Isobe, H., Tanaka, T., Murata, Y., Murata, M., Komatsu, K.
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Journal Title
J.Am.Chem.Soc. 127巻・49号
Pages: 17148-17149
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[Journal Article] Dependence of Molecular Recognition of Fullerene Derivative on the Adlayer Structure of Zinc Octaethylporphyrin Formed on Au(100) Surface2005
Author(s)
Yoshimoto, S., Honda, Y., Murata, Y., Murata.M., Komatsu, K, Ito, O., Itaya, K.
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Journal Title
J.Phys.Chem.B 109巻・18号
Pages: 8547-8550
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[Journal Article] Helium Entry and Escape through a Chemically Opened Window in a Fullerene2005
Author(s)
Stanisky, C.R., Cross, R.J., Saunders, M., Murata.M., Murata, Y., Komatsu, K.
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Journal Title
J.Am.Chem.Soc. 127巻・1号
Pages: 299-302