2003 Fiscal Year Annual Research Report
生態系機能に与える時間的変動性と空間的不均一性の影響
Project/Area Number |
03J05732
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三木 健 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 休眠 / 時間変動 / 細胞周期 / 共振現象 / 群集動態 / POC-DOC generalist |
Research Abstract |
1.時間的な変動環境下でのバクテリアの細胞周期を考慮した休眠戦略の進化 バクテリアの中には、資源量が少ないときに休眠する種と休眠しない種がいることが知られている。本研究ではバクテリアの細胞周期に注目した数理モデルを構築した。これにより集団中には、増殖(分裂)可能なステージにいる個体と細胞のサイズ増加にのみ資源を利用するステージにいる個体が同時に存在する。この細胞集団内部の構造が資源量の変動とともに変動するため、資源量の変動はその「供給量」の変動と集団内構造の変動との二つの要因の相互作用によって決まり、とくに供給量の変動と細胞周期との間に一種の共振現象が生じることが分かった。このようなメカニズムにより、休眠・非休眠戦略のどちらが有利になるかは、従来の研究からの予測のように供給量の変動周期の長短という外的な環境の特性のみによって決まるのではなく、集団内の相互作用もまたその決定要因であることが解明された。本研究の成果は数理生物学会および個体群生態学会において発表された。 2.環境の不均一性に注目したバクテリア群集組成の決定要因とその遷移過程の予測 水域生態系において有機物の分布は不均一であり、粒子状の有機物(POC)とより小さな溶存有機物(DOC)とが存在し、それぞれを成長資源とするバクテリアが存在する。近年実証研究により両方の資源を利用する種の存在"POC-DOC generalist"が示唆され始めた。そこで本研究では、POC specialist, DOC specialist, POC-DOC generalistという3つの異なる戦略間の相互作用をモデル化、バクテリア群集の組成の決定要因と、群集の遷移過程とを理論的に予測した。これにより、POCとDOCの質と、POCから水中へのDOCの供給速度とが群集組成とその変化の仕方を決める重要な要因であることが明らかになった。
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