2004 Fiscal Year Annual Research Report
生態系機能に与える時間的変動性と空間的不均一性の影響
Project/Area Number |
03J05732
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三木 健 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 多様性 / 微生物食物網 / ウイルス・ループ / ギルド内捕食 / Kill the winner仮説 / 物質循環 / 潜伏期間 / 数理モデル |
Research Abstract |
ギルド内捕食がバクテリア群集の多様性とその機能に与える影響の理論的検証 水域生態系において、バクテリアは有機物の分解とその回帰という大きな役割を担っている。これらの機能に大きな影響を与えると考えられるバクテリア群集の多様性の決定機構について新たな仮説を提案した。 バクテリア群集内の現存量は非選択的捕食者である鞭毛虫によって規定される一方、バクテリア1種あたりの現存量は、宿主特異的ウイルスの感染過程によって決定され、これがバクテリアの共存を可能にするメカニズムであるとこれまで考えられてきた。しかし、この仮説による共存種数の予測値は、野外で実際に観測される種数よりも大きいことが近年分かってきた。つまり、ウイルスが担う多様性維持機構がこの仮説では過大評価されている可能性がある。そこで、ウイルスの消失要因としてあらたに鞭毛虫によるギルド内捕食に注目し、このギルド内捕食がバクテリアの多様性を低下させる要因の一つであるという仮説を提案し、理論的検証を試みるために、食物網モデルを構築し、数学的な解析を行った。 その結果ウイルスのバクテリア細胞内での潜伏期間が長いほど、鞭毛虫がバクテリアを捕食される際に巻き添えになる確率が高まり、ギルド内捕食が強まることが予測されその結果バクテリアの共存種数が低下することが分かった。このとき、食物網の構造とその中の物質循環に注目すると、ギルド内捕食が強まることによって、ウイルスの現存量が減少し、バクテリアからウイルスに流れる物質の量に比べて、バクテリアから鞭毛虫に流れる物質の量が増加することが示唆された。このようにギルド内捕食はバクテリアの多様性に影響を与えるばかりでなく、微生物食物網の構造を変え、その中の物質循環までを改変しうるという予測を数理モデルの解析により得ることができた。
|
Research Products
(2 results)