2003 Fiscal Year Annual Research Report
スタンノールジアニオンを用いた含スズ新規π電子系の構築
Project/Area Number |
03J05877
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
芳賀 隆太 埼玉大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | 有機スズ化合物 / スタンノールアニオン / スタンノールジアニオン / 芳香族性 |
Research Abstract |
スタンノールモノアニオン及びジアニオンの構造について研究を行い、ジアニオンのX線結晶構造解析に成功した。解析結果から2つのリチウム原子は環の上下に位置し、スタンノール環内の炭素-炭素結合の交替がないことがわかった。これは、ジアニオンが芳香族性を有していることを強く示唆している。さらにスタンノールジアニオンのリチウムのNMRをエーテル中室温で測定したところ、-3.2ppmという高磁場にシグナルが観測された。このことはリチウム原子が環の上下に位置することによりスタンノール環の環電流の影響を受け、シグナルが高磁場シフトしていると解釈できる。従って溶液中でもこの構造を保ち、芳香族性を有していると考えられる。 理論計算によるアプローチは分子研の永瀬教授との共同研究として行い、X線結晶構造解析により得られた分子構造を支持する結果を得た。さらに、化合物の芳香族性を表す指標として最近用いられているNICS値を算出し、その値からスタンノールジアニオンがかなりの芳香族性を有していることが示されたた。 スタンノールジアニオンの反応については、2,4,6-トリイソプロピルブロモベンゼンとの反応により2,4,6-トリイソプロピル基がスズ上に導入された新規なスタンノールモノアニオンの合成に成功した。これまスズ上にフェニル基及びt-ブチル基が導入されたスタンノールモノアニオンの合成に成功しており、スズ上にかさ高い置換基が導入されたことによる構造や芳香族性の変化は興映深い。現在X線結晶構造解析を行うため、これらの単結晶を作成中である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Ryuta Haga: "Synthesis of Stannole Anion by Alkylation of Stannole Dianion"Chemistry Letter. 912-913 (2003)
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[Publications] Ryuta Haga: "Simple Method for the Synthesis of Stannole Dianion"Phosphorus, Sulfur and Silicon and the Related Elements. in press.