2004 Fiscal Year Annual Research Report
明治時代以隆の近代化に伴う人為海洋汚染が貝形虫群集に与えた影響の歴史的変遷の解明
Project/Area Number |
03J05950
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
安原 盛明 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 瀬戸内海 / 大阪湾 / 貝形虫 / 完新世 / 汚染 / 産業化 / 放射性年代 |
Research Abstract |
平成16年度の研究実績の概要は以下の通りである. 大阪湾における完新世貝形虫古生物地理に関する論文がMarine Micropaleontology誌で公表された.本論文は,申請研究課題である明治時代以降の近代化に伴う人為海洋汚染が貝形虫群集に与えた影響の歴史的変遷を明らかにする上で,バックグラウンドとしての自然環境変化と貝形虫の分布とのかかわり詳細に解明するという重要な役割をになう.具体的には,海水準変動・明石海峡や備讃瀬戸海峡の開口などの完新世の環境変化及びイベントに伴う貝形虫の分布の変化・移動を詳細に解明した.特に,備讃瀬戸海峡の成立に伴うBicornucythere bisanensisの急激な増加と,河内湾の形成・消滅に伴うBicornucythere spの移動が顕著に認められた. また,大阪湾における人為汚染と貝形虫の関係の時系列変化に関する論文がMarine Micropaleontology誌に受理された.貝形虫の個体数は1910-20年頃から1960-70年頃にかけて急激に減少する.この減少は全ての主要な種で起こっており,環境変化や汚染に耐性があるといわれている種も例外ではない.さらに,この減少時期は,様々な汚染や人間活動の指標(例えば,大阪市の人口,重金属濃度,富栄養化,貧酸素,COD・リン・窒素の負荷)が増加・深刻化する時期と一致する.このことは,産業革命以降の急激な産業化人口増加などに伴って,重金属汚染・有機汚染・底層水の貧酸素化などの様々な汚染及びそれに伴う現象が顕在化し,大阪湾の生態系が大きなダメージを受けてきたことを示している.また1970年代以降の法規制によって汚染は緩和されてきているにも関わらず,貝形虫の個体数が回復していないことは,一旦破壊された生態系を復元することの難しさを示しているのかもしれません.
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Holocene ostracode paleobiogeography in Osaka Bay, southwestern Japan.2004
Author(s)
Yasuharu, M., Irizuki, T., Yoshikawa, S., Nanayama, F., Mitamura, M.
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Journal Title
Marine Micropaleontology 53
Pages: 11-36
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