2003 Fiscal Year Annual Research Report
多重ゼータ関数の特殊値間に存在する代数構造とその母関数の関数等式についての研究
Project/Area Number |
03J06259
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井原 健太郎 九州大学, 大学院・数理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 多重ゼータ値 / associator |
Research Abstract |
1.2変数X,Yの非可換べき級数であるDrinfeld associatorはKunitznik-Zamolodchikov(以下KZ)方程式の0,1近傍に於ける基本解の接続係数を表すが,可換化すると自明になるという性質を持つ。これはKZ方程式が0,1区間に特異点を持たずモノドロミーが自明であることに対応する。それに対し今回、Drinfeld associatorをXで終わる項とYで終わる項の部分に2分し、各々の可換化の具体的な表示を得た。それは、高さ1の多重ゼータ値が全て係数に1度だけ現れる母関数であった。この母関数は、最近の大野、Zagier両氏の研究にも現れるものである。この事実の幾何学的解釈が次の問題となる。 2.多重ゼータ値が有理数休上生成する代数は、多重ゼータ値の重みと深さに関して、フィルター付の次数代数をなす。この代数の代数としての生成元の個数、より詳しくフィルターのどの階層にいくつの生成元が存在するかという問いに対して、その上限のある線形空間の次元を用いての評価を与えた(金子、Zagier両氏との共同研究)。多重ゼータ値の生成する代数には標準的な2種類の積が存在する(級数積、調和積)が、その情報をある多項式に翻訳し、多項式が満たす実質2種類の恒等式に帰着させた。その恒等式を満たす多項式からなる線形空間の次元が、生成元の個数の上限を与えるという結果である。単に一つの上限というのではなく、数値的には最良の評価を与えていることが推察される。加えて、深さが浅い場合の、その線形空間の次元の具体的表示を与えた。一般の深さでの表示を与えることと、深さが1,2のときに知られている保形関数との関連が更に深い深さではどうなるかを考察することが次の問題となる。
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