2004 Fiscal Year Annual Research Report
モニタリング方略の使用を促進する心理学的要因の解明と介入手法の開発
Project/Area Number |
03J06272
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
植木 理恵 立教大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 自己モニタリング方略 / 方略知識 / 学習観 |
Research Abstract |
文章を読んでいる途中でだんだん意味がわからなくなる,このような経験は誰にでもあるだろう。例えば長い推理小説を読んでいるとき,話の展開が複雑すぎて途中から筋を追えなくなってしまうことがある。 このような,「あれ,いま分からなくなった」「ここまでは分かっている」という,現在進行中の課題における理解状況の自己診断,すなわち「自己モニタリング(self-monitoring)」は,効率的かつ正確な文章読解において必要不可欠な認知機能の一つである(Pressley & Ghatala, 1990;辰野,1997)。なぜなら我々は,自分はここがわかっていないという状況を正確に把握できてはじめて,推理小説をそこから2,3ページ前まで戻って読み直してみる,登場人物の関係について少し頭の中で整理してみるというような,わからなくなった感覚から抜け出すための何らかの対処,工夫,試行錯誤が可能となってくるからである。もしも,この自己モニタリングという機能が全くなかったとしたら,最終ページまでとりあえず読み終えてはみたものの,自分が「分かったのか分からなかったのか」よく分からないという状態に陥ってしまうであろう。 本研究は,この「自己モニタリング方略」の重要性および児童生徒への定着の困難さを問題として掲げ,これを解決するための介入方法の提案を目指したものである。一連の実験の結果,(1)方略志向の学習観を促すだけでは自己モニタリング方略の使用には効果がないこと,(2)方略知識を教授することによって,自己モニタリング方略は一時的に使用されるようにはなるが,教授後3ヶ月以上経過すると使用されなくなること,そして,(3)方略知識と推論方略を併せて教授すれば,7ヵ月後の時点においても自己モニタリング方略はよく記憶され使用され続けること,が明らかになった。
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Research Products
(1 results)