2003 Fiscal Year Annual Research Report
琉球列島海域におけるサンゴ礁の保全・回復技術に関する生理学的研究
Project/Area Number |
03J06319
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
中村 崇 琉球大学, 理工学研究科・日本学術振興会特別研究員(DC2)
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Keywords | サンゴ / 保全 / 環境ストレス / 沖縄 / サンゴ白化 / 光合成 / 亜熱帯 / 地球温暖化 |
Research Abstract |
世界各地のサンゴ礁生態系がサンゴの白化現象により衰退の危機に瀕している。琉球列島海域のさんご礁も例外ではない。本研究はサンゴ白化抑制に関する基礎研究をおこない、回復・保全技術の指針を得ることを目的としている。研究の初年度である本年(平成15年度)は、サンゴを長期(年単位)にわたって人工飼育する試みと同時に屋内・屋外両方でのサンゴ実験系の確立をおこなった。また、サンゴの光合成機能が強光によるストレスでどのような傷害を受けるのかについて実験をおこなった。その結果、サンゴの白化と強光によっておこる光合成のストレス反応との相関性が高いことが判明し、強光のみによってサンゴを人為的に白化させる手法を得ることができた。また、サンゴ白化が野外で観察される高水温条件においてサンゴの光合成ストレス反応を解析した研究では、高水温(30℃以上)によって光合成機能修復に不可欠なたんぱく質合成系に顕著な阻害が起こることが明らかとなった。これらの知見をもとにサンゴ白化を緩和する方策として海流(または潮流)の効果に着目した研究をおこなった。この研究では、人為的に白化させたサンゴを用いて延べ9週間にわたる屋外水槽実験をおこない、その回復過程を調べた。サンゴに適度な潮流を与えた場合では潮流を受けないものに比べて速やかに白化状態からの回復がおこなわれ、生存性が高まる事が明らかになった。さらに、潮流によって環境ストレスによる光合成機能低下が緩和され、白化が抑制されることも明らかになった。平成16年度の研究ではサンゴの生理的ストレスに潮流がどのように関与するかを詳細に調べる予定である。
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[Publications] Nakamura T: "Water flow facilitates recovery from bleaching in the coral Stylophora pistillata."Marine Ecology Progress Series. 256. 287-291 (2003)
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[Publications] Takahashi S: "Repair machinery of symbiotic photosynthesis as the primary target of heat stress for reef-building corals."Plant Cell and Physiology. 45(2). 251-255 (2004)
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[Publications] 中村 崇: "生物の科学 遺伝 別冊 17号「地球温暖化」-世界の動向から対策技術まで-,大政 謙二,原沢英夫(財団法人遺伝学普及会 編)"裳華房. 173 (2003)