2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J06384
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
久住 真也 国文学研究資料館, 史料館, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近代史 / 明治維新史 / 幕末政治史 / 政治体系 / 将軍徳川家茂 / 薩長盟約 |
Research Abstract |
本年度は、幕末文久期から慶応期にいたる政治体制のあり方に大きな影響を与えたと思われる、幕府文久改革の研究を行った。その中でも、特に幼少であった将軍の実質的な政治的君主化がいかに行われてゆくか、という君側改革の視点からの分析に重点を置いた。将軍に関わる史料が乏しいことに鑑み、刊行されている多くの史料を読み込むことに多くの時間を割いた。その結果、将軍徳川家茂が政治的君主としての自覚を持ち始めるのは、大凡文久2年5月以降であり、それに際して影響を与えたのは、前越前藩主松平春嶽の、家茂に対する「帝王学」とも言えるものであったことを明らかにした。そして、家茂の能動的な政治的君主としての姿は、元治元年後半から慶応元年初頭にいたる時期を除いて、その死に至るまで見出すことができることも明らかにしえた。これは従来持たれているひ弱な将軍というイメージに対する見直しを迫るものと考えられ、将軍としての家茂を幕政・国政の中で位置づけ直すことで、幕政史をより立体的にかつ系統的に理解し、それをもとに、政治体制史も再考する道が開かれてゆくとの見通しを得ることができた。 一方、政治体制問題を考えるにあたり、全国の諸藩の動向も重要である。本年度は慶応期の薩長両藩の分析を行うべく、山口県立文書館で調査を実施し、史料収集を行った。その結果、近年新しい見解と、旧来の見解が対立を見せている薩長盟約研究についても、研究史に新たな一石を投ずることが可能であるとの見通しを得た。薩長盟約の分析を行った研究は、そのほとんどが慶応2年正月の薩長盟約締結前後の分析に終始しているが、分析の始期としては、慶応元年閏五月以降、終期は慶応3年6月の倒幕運動開始前後まで見るのが妥当であることを明らかにしえた。
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