2004 Fiscal Year Annual Research Report
学習可能性の拡大に関する至近要因と究極要因:鳥類の歌システムをモデルとした研究
Project/Area Number |
03J06650
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高橋 美樹 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 鳴禽類 / 繁殖成功率 / 音声学習 / 動物行動学 / 性淘汰 / 家禽化 |
Research Abstract |
今年度は、引き続きCross-fostering実験から行動を形作る究極要因(環境)と至近要因(遺伝)の相互作用が学習に反映される仕組みを理解することを、自由交配下の繁殖成功率をみることで家禽化によって学習可能性が拡大する過程をとらえることを目的とする。 1.Cross-fostering実験 ジュウシマツ(里親)にコシジロキンパラの幼鳥(里子)を育てさせた。この実験でみられた特殊なケースi)遷移規則が不安定であったコシジロキンパラ、ii)歌い出しに困難のあるコシジロキンパラについて、遺伝的基盤を共有する集団に合流させ歌の変化を見た。その結果、i)の場合、合流後1週間で遷移規則が単純化することがわかったが、ii)は歌い出しの困難が改善されることはなかった。i)は、ジュウシマツ様の歌であっても鋳型として学習できること、発声が追いつかずコピーしきれなかった遷移によって歌学習が収束しない要因であること示唆する。一方ii)の場合、発声が困難であっても鋳型の通りうたえることが学習の障害にならないことを示している(第23回日本動物行動学会にて発表)。 2.自由交配実験 ジュウシマツの雄11羽、雌10羽を禽舎で繁殖させた。三度に渡る繁殖のすえ、39羽のヒナが生まれた。ヒナから採血をし、DNAを抽出、親子判定を行った。その結果、雄の繁殖成功にばらつきが見られた。最も繁殖成功が高い雄は1羽(ヒナ8羽)、そのつぎが4羽(ヒナ5羽)、2羽(ヒナ3羽)、2羽(ヒナ1羽)、1羽もヒナを残せなかった雄が2羽であった。しかし、繁殖成功率の高い雄の歌は他個体よりも複雑な歌をうたうわけではなかった。 また、抱卵中のつがいは常に同じであったものの、その巣で生まれたヒナの中には抱卵ペア以外を親に持つヒナもおり、種内託卵もみられた。
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