2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J06692
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
青山 拓央 千葉大学, 大学院・社会文化科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 時間論 / 心身問題 / 自由意志 / 心の哲学 / タイムトラベル / マクタガート / 時間の矢 / 責任 |
Research Abstract |
平成15年度は、博士課程二年次以降の論文投稿・発表に向けて、準備的研究を進めた。大まかにその内容を列挙するなら、以下の三つの領域に大別することが可能である。(1)心身相関(とりわけ心的状態と脳状態との相関関係)の時間的同時性に関する、心的状態成立時点の遅延可能性に関する議論、(2)物理主義的決定論に全く依存しないかたちでの自由意志概念の消去、および倫理的責任の位置づけの議論、(3)自著(「タイムトラベルの哲学」,講談杜,2002)での研究を、ヒュー・プライスらに代表される時間対称的な見方において再構築した、タイムトラベルの思考可能性を探る議論。これらの準備的研究によって、平成16年度には三本以上の論文を投稿・発表することができる見込みである(三つ目の議論に関しては、既に論文の具体的な発表媒体が決定している)。 また本年度は当初の計画通り、マクタガートの時間系列に関する考察をまとめ、日本科学哲学会・第36回大会にて発表を行った(2003年11月16日・題目「マクタガートの洞察と失敗」)。そこでは、近年日本の研究者の間でも盛んなマクタガートのパラドックスをめぐる議論に、ある程度の解決を与えることができたと自負している。具体的な戦略を述べれば、その解決は時間系列の分離というマクタガートの基盤的議論を退けることによって可能となるが、その系列の分離の拒否は恣意的になされているわけではない。私はその具体的な根拠として、ダメットによるマクタガート擁護の再解釈や、時制的変化の記述不可能性など、マクタガートの視野を越えた議論をいくつか展開した。現在、同発表を論文にまとめたものを、学会誌に投稿中である。
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