2003 Fiscal Year Annual Research Report
現代米国の学校改革におけるコミュニティ構築の思想と論理
Project/Area Number |
03J06851
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
後藤 武俊 東北大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アメリカ / 学校改革 / 教育思想 / 学校コミュニティ / 教育スタンダード / チャータースクール |
Research Abstract |
本年度は、まずストライク(kennth A.Strike)の学校コミュニティ論を分析し、彼が学校を本質的に複数のコミュニティが重なり合う場所として認識していることを明らかにした。具体的には、(1)理念を共有する人々どうしのコミュニティ、(2)文化的遺産の伝達・学習を通して導かれるコミュニティ、(3)民主的社会の維持・発展に貢献できる、「対話」能力を備えた個人を形成する場所としてのコミュニティ、という異質なコミュニティが重なり合う場所として学校を認識していたのである。これまでの学校コミュニティ論は、賛否両論のいずれにおいても、基本的に上記のいずれかの側面において一元的に学校コミュニティを捉える傾向が強かったのに対して、ストライクがこれらを重層的に捉えようとしていることは注目に値する。特に、(3)にみられる民主的個人の育成が、(1)の承認の上に成り立つという認識は、他の論者に見られない独特の理解である。 次に、昨年9月の米国北東部における調査研究では、シラキュース大学大学院にてストライク教授を訪問し、上記の理解の妥当性を確認することができた。また、ボストンでの教育委員会および学校の訪問においては、チャータースクールなどを根底において支えている教育スタンダード政策に関する資料や証言を集めることができた。 最後に、年度末にかけては、上記(3)に関わる議論を展開しているガットマン(Amy Gutmann)およびハウ(Kenneth R.Howe)の所論を検討し、これらについては発表の機会を得ることができた。ガットマンについては、ストライクと比べて上記(1)・(2)よりも(3)の側面をより強調する立場と位置づけられること、それゆえにいくつかの問題点をはらんでいることなどを指摘した。また、ハウについては、翻訳の出版に関わる中で、ガットマンの議論をより平等主義的な側面へと拡張するものであることを捉えることができた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 後藤武俊: "「対話」能力の形成と教育の公共性 -A.ガットマンの「討議」概念を中心に-"多元文化国家米国における学校の公共性論議に関する史的研究(研究代表者 大桃敏行). (出版予定). (2004)
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[Publications] ケネス・ハウ, (大桃敏行, 中村雅子, 後藤武俊 共訳): "教育の平等と正義"東信堂(出版予定). (2004)