2005 Fiscal Year Annual Research Report
現代米国の学校改革におけるコミュニティ構築の思想と論理
Project/Area Number |
03J06851
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
後藤 武俊 東北大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 学校選択制 / コミュニティ / 市民性 / 多様性 / 同質性 / 分離主義 / 公教育 |
Research Abstract |
本年度は、これまでの研究を総括した。 1.1960-70年代の米国の学校選択論の再検討。この時期の学校選択論におけるコミュニティ概念の導入過程を分析し、70年代初頭には、独自の人種・民族・文化的価値に基づく学校コミュニティの構築を認める発想が提出されていること、また70年代後半には、家庭と専門家によって構成される、教育固有の関係性に基づくコミュニティの発想が提出されていることを明らかにした。 2.80年代米国の学校選択論の再検討。ここでは、学校選択制によって「多様な学校コミュニティ」の構築を求める議論を分析した。その結果、共通の教育理念に基づく学校コミュニティの構築を求める立場は、選択制の学校が過度に分離主義的にならないように、市民性教育を共通のスタンダードとして重視していることを明らかにした。また、独自の文化的価値に基づく学校コミュニティを求める立場は、国家による統制を極小化しようとしている点で、市民性教育を重視する前者とは大きく異なることを明らかにした。 3.80年代以降の市民性教育における学校コミュニティ概念の検討。市民性教育を重視する「多様な学校コミュニティ」構築論に対して、通学区制の下で、多様な生徒を集める中での市民性教育を重視する立場において、選択制がどのように位置づけられているのかを検討した。その結果、この立場の選択制承認の論拠は、理論的なものではなく、それを全て否定することは現状では不可能であるという政治的なものであることを明らかにした。そして、これまで学校選択支持論-批判論の構図で理解されてきた議論の多くは、実は選択制そのものの評価よりも、生徒集団の同質性/多様性のいずれに高い教育的価値を見出すかを対立点としていたことを明らかにした。
|
Research Products
(1 results)