2004 Fiscal Year Annual Research Report
磁性半導体量子井戸における光スピングダイナミクスの研究
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03J07080
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
萱沼 健太郎 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 希薄磁性半導体 / 量子井戸構造 / スピン注入 / 励起子ダイナミクス / 時間分解分光発光 / キャリアスピントンネル / スピン偏極 / レート方程式 |
Research Abstract |
我々は磁性半導体から非磁性半導体へのキャリアスピン注入過程を明らかにするために、希薄磁性半導体量子井戸と非磁性半導体量子井戸の間に非磁性半導体バリアを挟んだ2重量子井戸構造試料における励起子発光のピコ秒時間分解分光を行った。磁場印加の下で試料を光励起すると、磁性超格子Zn_<1-y>Mn_ySe/CdSe(MW)内でスピン偏極されたキャリアはバリア層のZnSeをトンネルし、非磁性井戸Zn_<1-x>Cd_xSe(NW)へと注入される。NW励起子発光に生じた円偏光特性の時間変化を調べることによりスピン偏極キャリアのトンネル過程を解明した。MW幅を40nm、バリア幅を4nmと一定にし、NW幅(L_<NW>)が7nmと2nmへ変化させた試料について調べた。L_<NW>=2nmの試料は、L_<NW>=7nmの構造と比べ、NW内の量子閉じ込め効果の増大によりMW-NW励起子発光エネルギー差(ΔE)が190meVから60meVへと減少した。これらの試料について時間分解PL測定を行うと、L_<NW>=7nmの試料では、NWPLの円偏光度は励起直後から〜0.15の値を示したのに対し、L_<NW>=7nmの試料では、円偏光度は励起直後は0を示し、非常に遅い時定数で上がっていった。電子-正孔個別トンネルモデルのレート方程式により、電子、正孔のトンネル時間を求めると、電子トンネル時間は50ps、正孔トンネル時間は10nsと、特に正孔トンネル時間が大きく抑制されている事が分かったL_<NW>=7nmの試料では磁場印加時においてもΔEが100meVよりも大きく、2E_<LO>よりも充分に大きいため電子と正孔がともにLOフォノン散乱を介したトンネルをする。これに対して、L_<NW>=2nmの試料では、磁場を印加すると正孔の準位においてはΔEは1E_<LO>よりも小さくなり、正孔のLOフォノン散乱によるトンネル過程は抑制され音響フォノン散乱によるトンネルのみが起こると考えられる。即ち、LOフォノン散乱時間は〜0.1psと非常に高速であるが、音響フォノン散乱時間が500psと遅いために、L_<NW>=2nmの試料のトンネル時間は非常に遅いものになっていると考察される。
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Research Products
(6 results)