2003 Fiscal Year Annual Research Report
脂質グリケーション産物を指標にした糖尿病診断法の開発と食品の抗糖尿病成分の研究
Project/Area Number |
03J07180
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
玉 正浩 東北大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | グリケーション / Amadori-PE / 糖尿病 / 膜脂質過酸化反応 |
Research Abstract |
アミノ・カルボニル反応はタンパク質と糖など親水性分子同士間の糖化反応(グリケーション)である。近年、生体膜を構成しているリン脂質のひとつで、第一級アミノ基を有するホスファチジルエタノールアミン(PE)がグリケーションを受け、アマドリ型の糖化ホスファチジルエタノールアミン(Amadori-PE)を生じる可能性が指摘されている。試験管内の実験では、Amadori-PEの生成が糖濃度に相関したため、糖尿病での高血糖による細胞障害への関与が推定される。したがって、ヒトの血液や組織標本にAmadori-PEが存在し、それを定量する技術ができれば、過去にない生体膜の新しいグリケーション指標が確立できると考えられた。しかし、このような脂質糖化産物の標品作製にまだ成功していないこと、またその生体内の存在に関しても末だ明らかにされていないことが現実である。そこで申請者はまず前報(J.H.Oak, K.Nakagawa, T.Miyazawa : FEBS Lett.,481,26 30,2000)に準じて糖化脂質の標品としてのAmadori-PEを高純度かつ多量調製できる反応系を確立しようとした。その結果、最適の化学合成条件(メタノール中の反応系)を探し、以前と比べ同量のPEから高純度標品が約10倍多く得ることが可能になった。また、リニアイオントラップ型ハイブリッド質量分析装置(4000Q TRAP^<TM>)により、ヒトの血漿にAmadori-PEが存在することを構造化学的に初めて証明した。糖尿病性透析患者の血漿では、糖化脂質と過酸化リン脂質の濃度が共に高かったため、高血糖状態に生じる脂質のグリケーション産物であるAmadori-PEは膜脂質過酸化反応を惹起することで糖尿病の増悪化につながることが示唆された。
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