2004 Fiscal Year Annual Research Report
抗腫瘍性抗生物質C-1027の分光学的解析と超天然物の創製
Project/Area Number |
03J07202
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
臼杵 豊展 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 天然物化学 / 同位体効果 / 抗腫瘍性抗生物質 / 高速液体クロマトグラフィー |
Research Abstract |
強力な抗腫瘍性抗生物質C-1027は、クロモフォアとアポタンパク質の1対1の複合体である。クロモフォアは、エンジイン部位からパラベンザインビラジカルを発生し、DNAの水素を引き抜くことによって生理活性が発現する。一方、9本のβstrandからなるアポタンパク質は、疎水性の高いポケットを有しており、不安定なクロモフォアをこのポケットに包摂することによって、安定化している。ビラジカルはその高い反応性のため、アポタンパク質のGly96の水素も引き抜き、C-1027は自己分解する。そこでビラジカルの反応性を抑制するために、Glyを重水素化した人工分子を設計した。 大腸菌発現系の培地に大量のglycine-d_5を添加することで、リコンビナント重水素化(D-Gly)アポタンパク質を調製した。HPLCテクニックを駆使し、調製したD-Glyアポタンパク質に極めて不安定なクロモフォアを取り込ませ複合化させた。得られたD-Gly C-1027と天然型(H-Gly)C-1027を、37℃で固体状態と溶液状態でそれぞれ静置して、クロモフォアの減少の度合いをHPLCにより分析した。すると速度論的同位体効果が、固体状態ではk_H/k_D=1.8、溶液状態ではk_H/k_D=4.1と求まった。これは半減期が、固体状態で7時間から12時間、溶液状態で37時間から151時間と飛躍的に向上したことを意味する。さらに、ヒト肝がん由来細胞JHH-7毒性試験に供したところ、37℃で2日間静置したD-Gly C-1027は、H-Gly C-1027よりもより低濃度で細胞増殖を阻害することが判明した。 以上のように、ビラジカルの引き抜き部位を水素から重水素へ置換するという純粋かつ合理的な設計によって、天然物より安定な分子(超天然物)の創製に成功した。
|
Research Products
(2 results)