2003 Fiscal Year Annual Research Report
オニグルミ自然個体群におけるメタポピュレーションサイズの推定
Project/Area Number |
03J07244
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木村 恵 東北大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | オニグルミ / 父性解析 / 花粉流動 / マイクロサテライト / メタポピュレーション |
Research Abstract |
集団内での花粉流動解析 オニグルミは個体群内に雌性先熟個体と雄性先熟個体の2つの先熟タイプの個体が存在するヘテロダイコガミーであり、両タイプが相補的に交配して種子を生産していると考えられる。また個体群密度が高い林分で種子の父性解析(花粉親探し)を行ったところ、開花フェノロジーや個体間距離が花粉流動に強く影響することが明らかとなっている、本研究では、DNAマーカー(マイクロサテライトマーカー)を用いて、さらに低密度の林分において種子の父性解析を行うことにより集団内での花粉流動の実態と送粉距離を明らかにした。 具体的には、東京大学北海道演習林の岩魚沢天然林において、約300m×600mの範囲に生育するオニグルミの開花フェノロジーを調べた。また、調査区内の11母樹から計418種子を採取し、8遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを用いて父性解析を行った。花粉親候補とした個体は調査区内で雄花を開花させた47個体である。その結果、5割にあたる種子の花粉親を特定することができた。そのうち9割の種子が200m未満の送粉によって生産されていたが、中には1kmを越える送粉も確認された。また高密度の個体群と同様に雌性先熟と雄性先熟のタイプ間交配による種子が最も多かったが、同じ開花タイプ同士の交配や自殖によって生産された種子も確認され、高密度の個体群とは異なる花粉流動パターンがみられた。これらの結果から個体群密度の低下は交配パターンの変化を介して次世代の更新にも影響を及ぼす可能性があることが示唆された。
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