2004 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおけるECU乖離指標方式の応用と為替レート安定のための介入政策の検討
Project/Area Number |
03J07277
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金 明浩 東北大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | EMS / 東アジア共通通貨バスケット / パリティー・グリッド方式 / 乖離指標方式 / 金利収斂 / 物価収斂 / 為替協力 / 介入政策 |
Research Abstract |
平成16年には前年度のEMSのパリティー・グリッド方式とECU乖離指標方式の併用によるEMSの安定性に対する研究結果に基づいて、東アジアにおける東アジア共通通貨バスケットの応用に対する計算と分析を行い、その研究結果の一部を日本国際経済学会第63回全国大会で発表した。 現在までの研究の主な結果は次の通りである。 1.パリティー・グリッド方式によってEMS各通貨為替の対ドイツ・マルク為替との連動性が強くなった。その連動性の高まりによってEMS各通貨間の為替相場はかなり安定したが物価と金利の中心国との格差は短期資本の投機を招き、EMSの安定を損なうことにもなった。ファンダメンタルズの悪化によって物価、金利の収斂が十分に行われない場合には通貨の乖離幅を拡大してEMSの安定をもたらす必要があった。 2.現段階の東アジア各国物価と金利の収斂は80年代半ばのEMS水準に匹敵でき、東アジアにおける通貨協力と為替協力の条件は整えたともいえる。しかし東アジア域内貿易と域内通貨の為替取引での利用状況などから見ると、東アジアではEMSのマルクのような中心通貨の選別が困難でありパリティー・グリッド方式よりも共通通貨バスケットを利用して域内通貨間の為替相場の安定をはかるのが望ましい。 3.対アメリカ貿易の高い依存度、為替取引中の米・ドルの高い利用度、各国の通貨協力に対する理念の相違などを考慮すると現段階では東アジア通貨だけで構成された通貨バスケットよりも米・ドル、円、ユーロからなるバスケットを基準にして一定のバンド内に東アジア通貨の為替相場を収斂させ、通貨間為替相場の安定を図るのがより現実的で実行可能である。また現段階では東アジア通貨だけで構成する通貨バスケットにECU乖離指標方式を援用し、その指標をも参考指標として用いて通貨間為替相場を安定させ、将来には漸次的に東アジア通貨だけで構成する通貨バスケットだけの採用に移行することが望ましい。
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