2003 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおけるECU乖離指標方式の応用と為替レート安定のための介入政策の検討
Project/Area Number |
03J07277
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金 明浩 東北大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | EMS / 東アジア共通通貨バスケット / パリティ・グリッド方式 / 乖離指標方式 / 非対称性 / 平価調整 / 為替政策 / 介入政策 |
Research Abstract |
平成15年は研究の1年目であり、主にデータの整理、文献の検索と収集、関連専門家のコメントと指導の聴取に精力を入れた1年であった。 現段階では東アジアとEU各国の為替データ、物価、金利データの整理が終了し、東アジアにおける共通通貨バスケットの設計と5年1回のバスケット構成の変更も終了した。EU通貨統合の経験を生かすため、EMSの中核であるECUとパリティ・グリッド方式とECU乖離指標方式の併用により生じうるEMSの非対称性に関する分析をほぼ終え、平成16年には研究成果の一部として発表するつもり(予定)である。現在までの対EMS研究分析の主な結果は次のようである。 1.パリティ・グリッド方式と乖離指標方式の併用によって各通貨の為替の対ドイツ・マルクの連動性が強くなった。すなわち、「脱ドル」の理念を叶うことにはなったが、内部通貨間非対称性問題が増幅される可能性も出てきた。 2.EMSにおける通貨の平価調整は単なる為替相場の相互安定の為の措置だけではなく、地域内通貨間の実質為替相場の安定による競争力の確保の措置でもあった。すなわち、地域内において購買力平価成立が確認できた。実質為替相場の変動による経常収支(貿易収支)の変化に関しては注文したIMFのDATABASE(CD-ROM)がまだ届けて来なかったため検証できなかった。 3.平価切下げ措置は該当通貨為替の対ECU為替相場との弾力性を低め、ECU為替相場の変動から受ける通貨の対米ドル為替相場の過度な変動を制約する措置でもあった。すなわち、EMSの安定するには地域内通貨間の為替相場の安定だけではなく、各通貨の対米ドル為替相場の一定の安定も必要であった。 上記の研究結果を踏まえて、現在は、東アジア共通通貨バスケットにおける非対称性問題に対する計算と分析を行う段階である。
|