2003 Fiscal Year Annual Research Report
最晩年のウィトゲンシュタイン 〜知識の確実性の基盤を巡る考察〜
Project/Area Number |
03J07278
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 圭一 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ウィトゲンシュタイン / 確実性 / 懐疑論 / 認識論 / 文脈主義 |
Research Abstract |
まず論文「確実性の論理学」(『思索』所収)において、ウィトゲンシュタイン最晩年の遺稿『確実性について』の中で蝶番の比喩で語られている言語ゲームの論理学を分析し、彼の最晩年の考察における根底的な主張を明らかにした。彼が蝶番の比喩で語ろうとした論理とは以下のような探究の論理である。様々な探究ゲームにおいて、あることを疑わないということ即ち「疑いの不在」としての確実性がそのゲームを定義しており、そのゲーム内部ではその確実性を疑うことも間違えることも不可能である。そしてこの「疑いと間違いの不可能性」という論点が、言語ゲームの可能性の条件として後期哲学からの一貫したモチーフであったという点を「確実性」概念の来歴を辿り直すことによって明らかにした。この概念は元々後期の遺稿『原因と結果』において言語ゲームの基本形式を形作る「疑うことなき振る舞いの仕方」として集中的に考察されていたものであり、これが『哲学的探究』において「規則に従うことの盲目性」として受け継がれ、最終的に最晩年の「確実性」へと結実したのである。以上の考察によって、彼の最晩年の思索を後期哲学からの連続性のうちに位置づけ直した。 次に、ウィトゲンシュタイン哲学の現代的意義を考察するために現代知識論のうちで最近注目を浴びている「認識的文脈主義」を研究し、「知っている」という語の意味論的分析を行った。この結果として、「知っている」という語の意味内容は「知っている」ために排除しなければならない可能性の領域によって規定されるという帰結を導き出し、その領域を設定するのは知識を問う者と答える者とが織り成す対話的な文脈である、という点を明らかにした。そして、この論点がウィトゲンシュタイン最晩年の思索の中にも含まれていたことを明らかにし、彼の最晩年の思索の現代的な意義を抽出した。
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Research Products
(1 results)