Research Abstract |
極超音速飛行するスペースブレーン用のエンジンとして有望視されている,スクラムジェットエンジン内壁におけるレイノルズアナロジーの妥当性を,数値計算を用いて定量的に議論し,その適用限界を調べた.その結果±10%程度の範囲で,エンジン内壁のおよそ90%でレイノルズアナロジーが適用できることが分かった.そこで,このレイノルズアナロジーを組み込んだ一次元解析により,いくつかのエンジン形状と飛行条件について熱負荷や冷却要求を調べた.例えばストラット付きエンジンでは,マッハ8飛行条件において,エンジン平均熱流束は燃焼時に0.5MW/m2となり,冷却に必要な水素流量は,燃焼用の燃料流量と同程度になることが分かった.従って,今後エンジンの作動マッハ数域を広げるには,冷却要請のおよそ80%を占める燃焼器においてフィルム冷却を行ったり,形状を最適化していく必要がある. マッハ6飛行条件のストラット付きスクラムジェットエンジンと,そのエンジンの燃焼器の一部を切り出したセクター燃焼器モデルに対して反応流計算を行い,エンジン内の火炎形状が,燃焼性能をどのように決定しているのか,またインレットの偏流が燃焼性能に対してどのような影響を与えているかを考察した.その結果,インレットの偏流により,燃料の大規模な合体が生じ,燃焼効率の増加が著しく抑制されていることが分かった.従って,今後エンジン性能を改善していくには,燃料噴流の合体を防ぐために,燃料噴射孔間隔の最適化を図ること,特にインレットを最適化し,カウル衝撃波による境界層内の二次流を低減していく必要がある.また数値計算で得られた,エンジン内の火炎構造と燃焼効率分布を比較することで,供試エンジンでも,ストラット壁側からの垂直噴射,ストラットベース面・カウル側からの平行噴射を行えば、燃焼性能を改善しうることが分かった.
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