2005 Fiscal Year Annual Research Report
超高分解能光電子分光装置の建設と高温超伝導体準粒子の研究
Project/Area Number |
03J07340
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 浩明 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高温超伝導体 / 角度分解光電子分光 / 準粒子 |
Research Abstract |
本年度は、電子型高温超伝導体Pr_<1-x>LaCe_xCuO_4(PLCCO)における電子構造と超伝導機構を明らかにするための光電子分光実験を行った。特に、電子型高温超伝導体における超伝導ギャップ対称性の完全決定を目指して研究を行った。これは、昨年度までに明らかにしたフェルミ準位近傍の電子の反強磁性相互作用が、超伝導発現機構とどのように関係しているかを明らかにする上で極めて重要な研究課題である。具体的には、過去の実験報告と比べて約2倍に向上したエネルギー分解能および角度分解能の下で、超伝導ギャップの波数依存性を精密に測定した。以下に実験結果の概要を示す。 はじめにPLCCOの常伝導状態において角度分解光電子分光(ARPES)測定を行い、フェルミ面とバンド構造を決定した。その結果、フェルミ面がブリルアンゾーン中のM点を中心とする大きなホール面であること、フェルミ面が磁気的ブリルアンゾーンと交差する領域(hot spot)において、電子の磁気散乱に起因すると考えられる擬ギャップが開いていることを見出した。次にフェルミ準位極近傍において超伝導ギャップ測定を行った。実験的に決定したフェルミ面に沿って波数を連続的に走査し、超伝導転移前後でのARPESスペクトルの変化を詳細に解析した。その結果、超伝導ギャップの開閉に伴うスペクトル端のシフトを明確に観測した。超伝導ギャップの異方性は、d_x2_<-y>2波対称性から予想される振る舞いとの明らかなずれを示し、最大ギャップが開く波数はブリルアンゾーン境界からhot spotに移動していることを見出した。 以上の結果から、電子型高温超伝導体の超伝導発現機構において、磁気的相互作用が主要な役割を果たしていると結論した。
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Research Products
(5 results)