2005 Fiscal Year Annual Research Report
配向交差分子線の衝突イオン化反応による分子軌道の立体反応特性の3次元計測
Project/Area Number |
03J07372
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山崎 優一 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ペニングイオン化 / 古典トラジェクトリ計算 / 分子軌道 / 相互作用ポテンシャル / 反応動力学 / 電子分光 |
Research Abstract |
本研究では、ペニングイオン化電子分光法を用いて、分子軌道の空間分布に関する情報を実験的に得ることを目指してきた。準安定励起ヘリウム原子He^*(2^3S)によるペニングイオン化反応においては、部分イオン化断面積の衝突エネルギー依存性(CEDPICS)には、標的MOおよび分子間ポテンシャル両者の立体的特徴が反映される。しかしながら、得られる実験データの制約などから、これまではMOあるいは相互作用ポテンシャル面の形状のどちらかを仮定して、一方のみを実測CEDPICSに照らし合わせて最適化する研究を推進してきた。本年度は、最近の実験装置の改良によって、これまでより広範な衝突エネルギー範囲でCEDPICSを観測できるようになったため、相互作用ポテンシャル面とMOの組を同時に最適化することを試みた。その際、MO形状を柔軟かつ効率的に最適化するためには、二倍原子価基底の枠組みでMO関数を表現する方法を採用した。その結果、窒素および一酸化炭素について、新しく得られた実測CEDPICSを十分に再現する相互作用ポテンシャル面とMOを同時に決定することができた。得られた相互作用ポテンシャル面に関しては、以前の研究と矛盾のない結果であり、最適化の解釈を与えることができた。一方、実験的に得られたMOを解釈するために、理論的に得られる種々のMOとその空間的な特徴に関して比較を行った。その結果、実験的MOは、理論計算において代表的なHartree-FockやKohn-Sham軌道とは異なった特徴を示すことが分かった。これは、Hartree-FockやKohn-Sham軌道ではイオン化過程に関して必ずしも厳密なMOを与えるものではないためであり、イオンと中性の正確な波動関数で定義されるDyson軌道によって初めて実験的MOの意味づけを与えられることを示した。
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Research Products
(4 results)