2003 Fiscal Year Annual Research Report
細胞質雄性不稔イネに対する稔性回復遺伝子のクローニングと分子機構の解明
Project/Area Number |
03J07407
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
風間 智彦 東北大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細胞質雄性不稔 / ミトコンドリア / 転写後制御 / 分子生物学 |
Research Abstract |
本年度は、Boro型細胞質雄性不稔イネにおいて、花粉稔性が回復する現象を分子生物学的に明らかにする目的で、マップベースクローニング法と相補性試験を用いて稔性回復遺伝子のクローニングを行った。マッピングによって挟み込んだ領域300kbに存在する遺伝子のなかで、ミトコンドリアへの移行とRNAとの結合が予測された遺伝子(PPR8-1,PPR8-2,PPR8-3)を含むゲノム断片を回復系統よりクローニングし、雄性不稔系統へアグロバクテリウム法で遺伝子導入を行った。この結果、PPR8-1を導入した個体でのみ花粉稔性・種子稔性の回復が観察された。塩基配列を解析した結果、PPR8-1は18繰り返しのPPR(pentatricopeptide repeat)モチーフをコードしており、N末端にミトコンドリア移行シグナルをコードしていることが明らかとなった。また、PPR8-1近傍に存在した、PPR8-2,PPR8-3はRf1と比較すると、それぞれDNAにおいて93.2%,93.7%と非常に相同性が高いことも明らかになった。一方、これまでの研究でBoro型細胞質雄性不稔性に関与すると考えられる細胞質側の遺伝子(B-atp6)も明らかにされている。これによると、Boro型細胞質雄性不稔系統のミトコンドリアにはATPaseサブユニット6をコードするN-atp6が2コピー存在し、一つのN-atp6の下流には79アミノ酸をコードする遺伝子(orf79)が存在し、B-atp6を形成している。雄性不稔系統でこの遺伝子は共転写されて2.0kbのB-atp6 RNAが生じるが、稔性回復遺伝子の存在下ではプロセッシングを受けることで、1.5kbのN-atp6 RNAと0.45kbのorf79 RNAが生じることが知られている。作成した遺伝子導入個体のatp6の転写制御について調べるためにノーザンブロット解析を行ったところ、PPR8-1導入個体のみでプロセッシングによって生じる0.45kb(orf79 RNA)のシグナルが観察された。以上のことから、PPR8-1が稔性回復遺伝子Rf1であり、イネ稔性回復遺伝子は細胞質雄性不稔原因遺伝子のプロセッシングに関っていることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)